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A・ベルマン『他者という試練』

ロマン主義ドイツの文化と翻訳 [藤田省一訳]

本書は言語活動としての翻訳をテーマに思索を深めてきたアントワーヌ・ベルマンの主著。翻訳論の決定版として世界各国で読み継がれている。

ベルマンは1942年生まれのフランスの思想家。ドイツ・ロマン派の専門家として出発するが、ドイツ文学やラテンアメリカ文学の翻訳を多数手がける中から「翻訳学」の構想を生みだした。言語学の下位概念ではない、自立的な知としての翻訳の可能性をひらく刺激的な仕事は翻訳をめぐる議論を一変させ、多大な影響を与えた。その結晶が本書である。
本書の舞台はロマン主義時代のドイツ。翻訳をめぐる問いが情熱を込めて提起され、翻訳がたんなる伝達手段であることを超えて文化の核心となった時代である。ドイツ語という「国語」がルターによる聖書の「翻訳」として成立した事実を発端に、ヘルダー、ゲーテ、ノヴァーリス、シュライアーマッハーらドイツの知識人たちは翻訳にかんしてきわめて豊かな思索の伝統を形成してきた。自国の文化の形成が、他者の言葉の翻訳を通してこそ可能だという思想は、やがて、他者という試練を経てこそ自己に回帰できるというヘルダーリンの企てに結実する。翻訳とは、他者の文化を熱烈に希求し、他者の言語と格闘し、自らを変容させる、情動に満ちかつ受動的な形態獲得の運動なのである。

言語間の対話的な関係をめざす「翻訳学」を打ち立てた本書は、フランスで高い評価をうけたのち、英語、イタリア語、ポルトガル語に翻訳され、翻訳論の最重要文献として読み継がれている。日本でも「翻訳を論じる場合にいまや欠かせないものとなった名著」(鵜飼哲『抵抗への招待』)として、山田広昭、野崎歓ら多くの人が、つとにその重要性を説いている現代の古典である。翻訳の秘めもつ途方もない創造性を探究した名著、待望の邦訳。




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