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トピックス

『封印の島』

ヴィクトリア・ヒスロップ 中村妙子訳 [全2巻]

2005年イギリスで、無名の新人ヴィクトリア・ヒスロップがデビュー作The Islandを上梓するや、またたく間に『サンデー・タイムズ』のベストセラーの階段を駆け昇り、8週間にわたってトップの座を独占しました。アメリカ、ドイツ、フランス、東欧、ロシア、台湾など世界二十数カ国語につぎつぎに翻訳され、初版刊行から3年をへた2008年にも、イギリスでBook Senceにピックアップ、ギリシャでベストセラーの第1位獲得、イスラエルでベストセラーに16週連続のピックアップ……2007年度「ブリティッシュ・ブック・アワード」新人賞に輝くという快進撃を続けています。

『封印の島』が、世界中で、これほど多くの読者から喝采をもって迎えられた理由は何でしょう。

著者は、作家としてデビューする前は、トラベルジャーナリストとして世界中を巡り、プライベートでもギリシャを20回以上訪れています。ある夏、実在するかつてのハンセン病コロニー、スピナロンガ島を訪ね、その廃墟から、予想した負のイメージとは正反対の強烈な印象を受けたのがきっかけとなって、『封印の島』が生まれました。島の歴史を調べ、ハンセン病について学び、専門家や支援団体の扉を叩き……ドキュメンタリー的な確かな土台のうえに、けれど、著者は想像力の翼を自由にひろげて、さまざまなキャラクターをそこに住まわせました。悲しみといたわり、情熱、希望、そして愛する者に捧げられた犠牲……封じられた島、封じられた過去がしだいに呼び醒まされてゆく長大なストーリーは、最初から最後のページまで息もつかせず、いくつもの支流をあつめながら、一つの大きな流れに向かってゆきます。

ハンセン病については、これまで日本でも、『生きがいについて』『人間をみつめて』などの神谷美恵子の著作(『神谷美恵子コレクション』全5巻・小社刊)に、深い洞察をもってとりあげられています。神谷美恵子はいうまでもなく、精神科医としてハンセン病療養所・長島愛生園での治療に生涯を捧げたひとでした。また、塔和子さんなど、元患者のかたがたによる詩や手記も刊行されてきています。想像もつかないほどに重い荷を背負って歩んだひとびと、そのようなひとびとの傍らを去らず、添いつづけたひとの言葉は、たとえようもない真実をもって私たちの心に迫ってきます。
が、いっぽうで、その真実にひたと目を向けることへのとまどい、畏れを感じる気持ちも、誠実に向き合えばこそ、またありえたのではないでしょうか。そしてまた、目にした現実をルポルタージュやノンフィクションや学術論文や手記といった形で、他のひとに伝えることには当然、さまざまな困難がともなうのではないでしょうか。訳者、そして私どもが、この『封印の島』を手にして感じたのは、

――小説だからこそ、伝えられる真実がある――

という、確かな思いでした。ひとりでも多くのかたにお手にとっていただけたら、と思います。




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