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ポール・リクール『レクチュール』
政治的なものをめぐって 合田正人訳
フランスの哲学者ポール・リクールは、1913年に生まれ、2005年5月20日に93歳で没した。最晩年まで衰えぬ思想の展開をみせ、2000年には第16回京都賞(思想・芸術部門)を贈呈され、京都で開かれた記念講演会の席に元気な姿をみせた。
そのリクールの仕事の主なものは、これまでにも翻訳・紹介がなされてきているが、それでも、必ずしも哲学者の大きさに見合う仕事がし尽くされたとは言えない。しばしば聞かれる「リクールは折衷主義者である」という批判も、日本で、その思索の全貌がいまだ捉えられていないゆえにおこったものではないだろうか。
リクールの思想の全体像を呈示してゆく、きわめて有効なきっかけとなることを願って、本書の翻訳は始められた。アーレント、ヤスパースに加えて、ジョン・ロールズ、エリック・ヴェーユ、そしてヤン・パトチカ……その思想についての書評的文章を大きな柱に据えた本書は、『意志の哲学』『時間と物語』『記憶・歴史・忘却』などの大著とも、『解釈の葛藤』のような論争の書とも異質に見える。一見、周縁的なテクストを編んだかにも見えるこの書は、しかし、当時のフランスに画期的な出会いをもたらしたリクールの思想的慧眼を、いまさらのように証左し、時代と、そこに生きた哲学者自身の姿をも映し出しつつ、持てるすべての宝がまだ探り尽くされていない20世紀を代表する哲学者の思索の中核へと私たちを誘うことだろう。
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