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トピックス

山本義隆『福島の原発事故をめぐって』

いくつか学び考えたこと

『一六世紀文化革命』(全2巻、2007年)の最終章で、自然を支配しようとした近代科学およびその科学技術への批判を著者・山本義隆は展開した。同書「あとがき」では、その極北にある核エネルギー問題にも紙面が割かれている。このたびの福島原発事故、およびその後の政府・東京電力・マスメディアはじめ日本社会の反応を目の当たりにした著者は、長年考えてきた核問題・原発依存社会について、はじめて自身の考えを一冊の本に書き下ろした。

◆韓国語訳が刊行されました

韓国語版がいちはやく翻訳刊行されました(2011年11月)。出版社は、すでに山本義隆『磁力と重力の発見』『一六世紀文化革命』の韓国語訳を、それぞれ全一巻の大冊として刊行している東アジア出版EAST ASIA Publishing Companyです。

(『一六世紀文化革命』全2巻のあとがきより)

ついでに少しばかり先走っておこう。17世紀科学革命は、大学で高等教育を受け、中世スコラ学によって培われてきた厳密な論証の技術を身につけた知識人が、この職人・技術者の提起を受け止め、新科学形成のヘゲモニーを自分たちの手に取り戻すことによって達成された。
〔……〕
もともと近代自然科学とりわけ物理学や化学は法則の確立を目的としていたが、しかしその法則というのは、直接的な応用とは無関係な天文学をのぞいては、まわりの世界から切り離され純化された小世界、すなわち環境との相互作用を極小にするように制御された自然の小部分のみに着目し、そのなかで人為的・強制的に創出された現象によってはじめて認められるものである。自然科学はそのような法則の体系として存在し、実際にはかなり限られた問題にたいしてのみ答えてきたのであるが、そのような科学にもとづく技術が、生産の大規模化にむけて野放図に拡大されれば、実験室規模では無視することの許された効果や予測されなかった事態が顕在化するのは避けられない。そしてそのような効果や事態は往々にしてネガティブな結果をもたらすことになる。そもそもが、近代西欧の科学技術が自然の支配と地球の収奪を目的としたものであるかぎり、自然破壊や生態系の混乱を生み出すのはほぼ必然であろう。そのネガティブな遺産は、20世紀後半になって一斉にプロテストの声をあげはじめている。
ところで、大規模化された科学技術がそのもつ力と要するコストゆえに強力な国家や有力な社会集団の権力と結びつくのは、ほとんど不可避である。そのことは、16世紀のアグリコラの描いている鉱山業においてすでに顕在化している。したがって問題は、一般に科学技術に正と負の両面があるということではなく、プラスの側面の恩恵を受けるのはがいして地球上の一部の地域の限られた人たち――端的に豊かな国の人たち――であるのにひきかえ、マイナスの側面は、平等にというか、むしろ貧しい階層そして貧しい国の人たちにより多く負わされてきたということにあるだろう。早い話、化石燃料を大量に消費することによって高レベルの生活を維持している人口は世界全体でみればごく少数であるが、そのために生じる大気と環境の変化は地球上のすべてに及んでいる。
その「科学技術」すなわち「科学が基礎づけ科学が先導する技術」の極北に核エネルギーの問題がある。

(つづく文章は、『一六世紀文化革命』2の735頁以下でお読み下さい)




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