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トピックス

『ライファーズ 罪に向きあう』

坂上香

問題は、監獄から出所するかどうかではない。あなた自身が、内なる監獄から、いかに自由になれるかだ。
(ナヤ・アービター&フェルナンド・メンデス)

受刑者が300万人を超えるアメリカ。そのうちライファーズ(lifers)と呼ばれる終身刑・無期刑受刑者はおよそ15万人。更生を支援する民間団体「アミティ」は、刑務所内プログラムや社会復帰施設などで、受刑者に積極的に関わってきた。再犯率が三分の一に減少するという、驚異的な成果を上げている。
冒頭の言葉はアミティ創設者のもの。創設者はじめ、スタッフの多くは元受刑者や元薬物依存者。かれら自身が、「内なる監獄」から立ち直ってきた人たちだ。その経験を生かし、アミティではユニークな更生の方法をとる。罰するのではなく、とことん語りあうのだ。

禁止したり罰を与えても、彼らが学んできてしまった考え方や態度を変えることはできない。
(レジーナ・スラウター)

受刑者たちは、自分の人生を幼児の頃からひもとき、洗いざらい語る。だが、それは容易なことではない。自分が犯した罪とそこに至るまでの体験を、まず自分の中で認めることは苦しい。そこで重要になるのが、聞き手の存在だ。

それにしても俺たちの多くが、一番憎んでいたものに成り下がってしまったなんて、皮肉だと思わないか? 俺は、もうそんな自分をやめた。なぜって、それはこのコミュニティが、人に関心を持つ人々によって成り立っていて、人に関心を持つことを知らない俺たちに、その方法を教えてくれたから。人に関心を持ったり、人を愛したりする方法を教えるなんて、変だって思うかもしれないが、その手ほどきを受ける必要がある人間だっているんだ。
(フアン・アルバレス・チャビラ)

受刑者たちは繰り返し語りあい、耳を傾けあうことで、安心して心を打ち明ける場所をつくっていく。そこは、罪に向きあうスタート地点、いわばベースキャンプだ。

刑務所には生まれてきたこと自体、前向きに受け止められない奴らも多いんだ。俺もそうだったように、ね。自分の命さえ尊く思えない人間が、他人の命を大切にできると思うかい?
(ジミー・キーラー)

ライファーズの多くは仮釈放の可能性があるが、実際に釈放される人はほんのわずかだ。それでもかれらは社会復帰した元受刑者にメッセージを送りつづけ、心の支えになっている。かつて友人を傷つけ、家族を捨てた受刑者は、釈放後、ゲットーに戻って子どもたちの手助けをしている。なぜか。釈放されても、されなくても、学び直し、生き直すことはできるのではないか。暴力の連鎖を断ち、「内なる牢獄」から自由になろうと歩き続けるライファーズの魂の旅を、ぜひ目撃してほしい。

(編集担当 鈴木英果)




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