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2016.09.12トピックス

夢についての論考をはじめて一冊に。臨床家ユングの姿を生き生きと伝える

『ユング 夢分析論』 横山博監訳 大塚紳一郎訳

本書のポイントは大雑把にいうと二つある。ひとつは、「夢」についてのユングの論考をはじめて一冊の本にまとめたこと、もうひとつは、臨床家ユングの姿を生き生きと伝えた本である、という点で、この二つは密接に結びついている。

フロイトが「夢は願望充足、睡眠の守り手」と考えたのに対し、ユングは、夢とは「あるがままの姿で」こころの状況を描くもので、共同社会に適応するためにどうしても一面的にならざるをえない自我・意識に対する補償の役割を果たしている、と基本的に考えていた。

本書には、治療者ユングがクライエントに対する臨床のひとつとして慎重に夢分析をおこなっている様子が、じつに生き生きと描かれている。夢分析とは、夢占いのように一回きりで結論を出せるようなものではまったくなく、数年にわたりじっくり取り組む必要のあること、人生の節目にある人は元型的イメージの夢を見る場合のあること、自我・意識が狭く、固すぎると、無意識の生き生きとした創造性が失われ、意識に統合されえないようになり、クライエントによくないことも起こりうる、したがって統合失調症や双極性障害の人に夢分析をおこなうのは注意を要すること、など。臨床を学ぶ者にとって重要なメッセージが満載である。

本書所収のはじめの三論文「夢分析の臨床使用の可能性」「夢心理学概論」「夢の本質について」は、そのようなユングを知り、臨床の現場を勉強するために必読のものだ。その次の「夢の分析」と「数の夢に関する考察」はフロイトの影響下にあった若きユングの論文、最後に収録した「象徴と夢分析」は最晩年1961年に書かれ、「集合的無意識」「元型」「象徴」など、ユング心理学が文化人類学、民俗学、宗教学、神話学、さらには文明論へと縦横に展開され、その関係で夢を論じたものである。個人的な印象では、刺激的で面白いが、話が大きすぎて、臨床家の姿からは少しかけ離れているかもしれない。

フロイト『夢判断』をはじめ、こころの病と夢との関係を論じた本はとても多い。それだけ人を惹きつけるテーマなのだろう。みすず書房からも、ビンスワンガー/フーコー『夢と実存』、ボス『夢――その現存在分析』、エー『夢と精神病』(この本には、精神分析学におけるフロイト、哲学におけるサルトルの夢についての取り組みに対し、精神医学からの課題と試みが、膨大な文献指示とともに描かれている)などが刊行されている。そう考えたとき、本書の特徴は、夢分析の臨床現場が丹念に綴られているということになるだろう。

ユング心理学の入門書としても、心理臨床を学ぼうとする若き学徒に読んでいただきたい。ユングの著書はみすず書房から数多く刊行されているので、本書の次に、そちらに進んでいただければありがたい。

C・G・ユングの3点を新装復刊

ユングの心理療法を知るうえで重要かつ親しみやすい3冊を、新装版として刊行しました。
新装版は、本の内容は従来の版と変わりませんが、いま改めて新しい読者のもとへ広くお届けするために、カバーの装丁を一新して復刊するものです。

そのほかC・G・ユングの本
フロイトそのほか関連書より



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