みすず書房

ポール・L・ クーシュー

Paul-Louis Couchoud

フランスの哲学者・精神科医で、俳句(ハイカイHaikai)をヨーロッパに本格的に紹介した詩人でもある。1879年、イゼール県ヴィエンヌ生まれ。ソルボンヌ大学卒業後、1901年エコール・ノルマル卒業、専攻は哲学であった。アルベール・カーン基金より給費を得た世界周遊の途次、1903年に来日。1904年2月、日露戦争開戦を東京で迎え、4月に大阪、広島を訪れる。2月6日から4月初旬まで、戦時下の日本の国家・民衆・社会・習慣・文化などについて克明に観察した日記を綴った後、帰国の途につく。同年秋、ソルボンヌ大学で精神医学を学びはじめ、1911年、医学博士号取得。この間の1906年ころから、アナトール・フランスとの親交が始まる。1912年、日本再訪。東京で旧交をあたため、また箱根や京都を訪れる。帰途、中国の曲阜の孔子廟を観る。1913年、アンティップ・セバストス夫人を知り、その所有にかかる療法院「レ・タマリス」の医師となる。1917年、軍医補として第一次世界大戦に従軍。1918年、セバストス夫人と結婚。1920年、N.R.F.誌の「ハイカイ」記事に掲載された作品のうち4篇にジャック・ブリユアンが曲をつける。1924年、著者がフランス語に訳した和歌14篇にクロード・デルヴァンクールが作曲する。1936年、パリを訪れた高浜虚子に会う。1959年、故郷ヴィエンヌに歿した。80歳。著書『ブノワ・ド・スピノザ』(初版1902、フランス学士院賞受賞により再版1924)、ハイカイ集『水の流れのままに』(1905)、『アジアの賢人と詩人』(本書『明治日本の詩と戦争』、初版1916、A・フランスの序文を付した第4版1923)、『蛍——父からマリアンヌ・クーシューに語られた日本の物語』(1924)、『イエスの謎』(1924)、『イエス、人と成された神』(1937)、『神イエス』(1951)などのほか、多数の共著、編著がある。