みすず書房

フランス革命に先行する18世紀フランスは、従来絶対王制の典型として描かれてきた。だがそれは、典型的な絶対王制とはいいがたい歴史的個性を有していたのである。著者はこの時代の歴史像を、1716-26年経済危機の分析から透視しようとする。ジョン・ローのインフレ政策期とドダンのデフレ政策期から成るこの時期は、絶対王制における金融的・財政的矛盾が頂点に達した時期であり、絶対王制から市民革命へと至る過程における一大転換期だったのである。厖大な原史料を駆使して未開拓の領域に切り込んだ本研究は、わが国のみならずフランスにおいても高い声価をかちえている。
著者の経済史研究は、先進経済との共存・競合のもとにおかれた後進経済の歴史的命運という問題意識に貫かれている。18世紀フランスは、すでに市民革命を経験し産業革命の前夜に達していたイギリスとの対抗関係にあった。そうした状況におけるフランス経済のあり方、また、経済思想の機能転化という現象——前著『低開発経済分析序説』と相通づる現代的意義をもった問題が克明に追究されているのである。