みすず書房

推計学者として知られる著者はこの20年来、ヒトの個体差を計量化し、その法則性をもとめる仕事をつづけてきた。それは、基本的生命過程の定義からそのモデルまで、いくつかの具体例をも含め、ここに計量的にまとめられた。
出発点は薬害での個体差であった。遺伝学的に適当な物差しを選ぶと、生命現象に本質的な体内物質の濃度の個体差はきわめて小さなことが見出された。個体差の合理的な物差しを見つけること、そしてその経験法則を探すこと。この医学の計量化の第一歩から、成長直線、乳歯萌出点列、アルコール代謝等の線形化がなされた。その経験法則が正しいなら、何が予測できるかを考え、その予想を確かめること。成長直線からは、予想どおり、個体によらない思春期の不動点の存在が確認され、その実体の解明が未来に待たれる。また、成長の異常の早期発見などの可能性にも満ちている。
正常成長では推計値と実測値とが2、3ミリしか違わないことを見て、一見複雑な人間が簡単な自然法則に従っているのを知ると、驚きと感動をすら覚えることだろう。