みすず書房

善とは、悪とは何か。神秘主義の可能性は? レジスタンス期に生きる意味を問うた思考の軌跡。

「音楽はどの音符にも存在しない。関係のうちに存在する。しかも人を感動で泣かせる。人間とはこういうものだ。関係性が肉体を感動させるのだ。ゲシュタルト心理学者が動物におこなった実験。条件反射を惹起する関係性。——スピノザ参照、〈魂は肉体の形態である。〉涙を流させる関係性。ふしぎだ」
「子ども時代に始まり死ぬまで続く人間の大いなる苦痛とは、見つめることと食べることとが二つの異なる営みだということだ。永遠の至福とは、見つめることが食べることであるような状態をさす。見つめているものは実在的ではない。それは装飾にすぎない。食べるならば、その対象は破壊され、もはや実在的ではなくなる。原罪がわれわれのうちにこの分離を生じさせたのだ」