みすず書房

官能教育 2

EDUCATION OF THE SENSES 2

判型 A5判
頁数 344頁
定価 6,160円 (本体:5,600円)
ISBN 978-4-622-03202-1
Cコード C3010
発行日 1999年6月24日
備考 現在品切
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官能教育 2

本書のタイトルは、ある若者の成長過程を描く、フローベールの『感情教育』に想を得ている。小説の主人公は、世に出てさまざまな種類の、しばしば矛盾する教育を受けるが、19世紀の中産階級についても、同じようなことが言える。「彼らの官能の形成にとって、社会という公的領域は大きな影響力をもつものであった。それは、官能に糧を与え、あるいは障碍となる。つまり、社会は官能を教育するのである」。
〈性〉などというやっかいな問題に出会ったら、まず抑圧するのが19世紀ブルジョワの分別ある態度だった。その極端な現われに、堅いペニスカバーを装着させ、陰核切除すら実行してしまうマスターベイション根絶運動がある。
難題を知識の力で乗り切ろうとする考え方も出てくる。啓蒙的パンフレット、ポルノグラフィー、男女の裸体像などは、容易に読み、眺められた——いずれも現実の経験に際しては、役に立たなかったが。
さらに、物質生活の向上を背景に、プライヴァシーという、新たな概念が発明されたが、その砦=家庭は、まさにフロイトが扱う症例の生じる場でもあった。
つまるところ、ブルジョワの性愛は不毛だったのか?
厖大な史料を駆使して19世紀中産階級文化における個人の位置を問う、数冊の分厚い書物に結実する研究の端緒が、いま、ここに開かれる。