みすず書房

労働階級と危険な階級

CLASSES LABOARIEUSES, CLASSES DANGEREUSE

判型 A5判
定価 7,150円 (本体:6,500円)
ISBN 978-4-622-03487-2
Cコード C1020
発行日 1993年2月9日
備考 現在品切
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労働階級と危険な階級

19世紀の前半、パリの人口は爆発した。ナポレオンの退場とともに、農村や町から首都をめざして、人々の大移動がはじまる。都市は変貌した。パリの空は黄色く煤け、街路には泥濘があふれた。が、なによりも変わったのは住民自身だった。

はびこる犯罪——。とはいえもはや大盗賊の時代ではない。パンひと切れを盗んだジャン・ヴァルジャンのように、〈ミゼラブルな人々〉は危険な存在になりつつあった。冬の寒さが、コレラが、民衆を直撃する。死の前の不平等、それが病める都市の現実であった。

著者は、二種類の史料を博捜して、この時代の社会変動の、いわば生物学的基礎を暴いていく。ひとつは文学作品から新聞の雑報欄にいたる質的資料。そこにはパリの裏町の情景が生き生きと描かれ、しかも無意識の細部にさえ時代の痕跡が姿をとどめている。もうひとつは人口動態を示す数量的資料。ここには、世の中のありとあらゆるものを数え上げようとする、統計家たちの妖しい情熱が反映していた。下水道の闇や売春宿の奥にまで、彼らは数字の表を手にして入りこむのである。

アナール派と一線を画しつつ、社会史の革新を追求してきたルイ・シュヴァリエにとって、本書はその壮大な野心と学識を惜しみなく注ぎこんだ代表作である。二月革命を前にした不穏な一時代の空気を、これほどまでに濃密に書きこんだ歴史書は類を見ない。人々の生と死を呑みこみながら、都市という怪物はこうして成長した……。