みすず書房

徳・商業・歴史

VIRTUE, COMMERCE, AND HISTORY (Part I and II)

判型 四六判
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-03490-2
Cコード C1022
発行日 1993年10月10日
備考 現在品切
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徳・商業・歴史

ポーコックは〈シヴィック・ヒューマニズム〉——ギリシャ・ローマの都市国家を支え、マキャヴェリによって再び発掘された共和制の精神——の伝統を再評価し、政治思想史の大がかりな読みかえの枠組みを提起したことで知られる。思想史研究、思想史方法論、イギリス史の再検討という3つの領域にわたる彼の革新的で斬新な成果は、本書の18世紀イギリスの政治思想史をめぐるエッセイにおいても、その十全な展開を見せるであろう。

本書をつらぬく基本的なモチーフは、近代の商業社会の抬頭に伴う〈ヴァーチュー(徳)〉から〈マナー(作法)〉への重心移動である。ことに、徳と権利の概念を対比して、作法の概念の成立との関連で商業文明の積極面を論じた第2章、動産の概念の成立と18世紀の社会学を広く展望した第6章は、発表以来その大胆な問題提起で注目を浴びている。ヒューム、ギボン、タッカー、バークといった思想家の言説を解読して進められるそれらの議論は、序章で展開される方法の革命——言説史の方法——とあいまって、刺激的である。現代の文明社会をも射程に入れる広く深い独自の視点をもった画期的な思想史研究。

目次

日本語版への序文
序章——政治思想史の技法の状態

第一部
第2章 徳、権利、作法——政治思想史家のための一つのモデル
第3章 権威と所有——自由主義の起源の問題
第4章 1776年——議会に対する革命

第二部
第5章 18世紀初期イングランドにおける政治的、歴史的時間の諸様式
第6章 所有の流動性と18世紀社会学の興隆
第7章 ヒュームとアメリカ革命——あるノース・ブリトンの末期の思想
第8章 ギボンの『ローマ帝国衰亡史』と啓蒙後期の世界観
第9章 ジョサイア・タッカーのバーク、ロック、プライス論
——18世紀保守主義の多様性に関する研究
第10章 バークのフランス革命分析の政治経済学