みすず書房

ド・ゴールの時代、アンドレ・マルローが文化問題相に就任して以来、フランスはその充実した文化政策により、地球上で最も先進的な〈文化国家〉として、世界にそのモデルを提供してきた。しかし、マルローが着手し、ボンピドゥーが継承し、ジャ、ソク・ラングにより最終的帰結にまで達した感のある〈文化国家〉の実像はいかなるものであったか。著者フュマロリ(コレージュ・ド・フランス教授)は、文化国家の成立と歴史を、前史にまで遡って辿り、その功罪を検証する。

文化が個的な創造性を失い、国家官僚によって主宰されるオブセッシォネルな文化となれば、それは疑似宗教に他ならない。かつてのヨーロッパの精神の首都パリは、数々の文化イベントと記念祭に彩られ、大統領の事業を誇示する記念建造物に埋め尽くされ変貌しつつある。その影では芸術・学問の世界も、そして民主制そのものも変質しつつある、と著者は言う。本書は、ユニークな文化史であるとともに、現代文明への省察の書でもある。経済大国の対極にあるかのような国家像は、一つの鏡として、またメセナ(芸術の保護)を考えるにあたって、われわれに深い示唆を与えずにはおかないであろう。

目次

序章——新世界

I 文化国家の起源
1 設立政令
2 ルプソワール——第三共和制
3 文化国家の二つの比較的な試み
4 アンドレ・マルローと文化宗教

II 文化国家の肖像
1 舞台の背景
2 四旬節と謝肉祭
3 文化——かばん語、スクリーン語
4 文化党から文化省へ
5 妥協
6 余暇とさまざまの余暇
7 国家の近代性
8 大学に対立する文化
9 フランスとテレビジョン

結論——アクチュアリテと記憶
1 脊椎動物と無脊椎動物
2 フランスと精神のヨーロッパ