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臨床日記<品切>

JOURNAL CLINIQUE

JANVIER-OCTOBRE 1932


[新装版として刊行いたします]

フロイトの『夢判断』刊行とともに幕を開けた20世紀は、精神分析の世紀だったとも言われる。しかし、その萌芽期や発展期に考えられ実践されてきた重大な成果を、われわれは遺産として、十分に受け継いでいるであろうか。ここにはじめて公刊するフェレンツィの『臨床日記』は、精神分析の可能性をぎりぎりまで押し進めた人の思索の軌跡であり、精神分析史上もっとも重要なドキュメントである。
ハンガリー出身でフロイトの一番弟子だったシャーンドル・フェレンツィは、死の前年の1932年、分析医である自分自身と患者のために、日記を書き付けた。精神分析運動がもっとも活発だった時期をほぼフロイトと同行していたフェレンツィの思想のすべてが、ときに荒っぽい形であれ、ここには表現されている。フェレンツィにとって、人間とは人間関係のことであり、人間関係とは広い意味で性関係のことであった。この日記に頻出する医師と患者のあいだの相互分析をめぐる議論は、まさに迫真である。また、心的外傷(トラウマ)問題の重要性をくりかえし説き、立ち入って考察している。
人間の心のあり方やその障害像を、そのニュアンスの陰影までかくも繊細かつ大胆に言葉に刻みつけた本は、稀であろう。ここには、師を批判しつつも、フロイトが提起したり萌芽状態のままにしておいた問題を徹底して押し進めていった弟子の姿がある。「人間の生の謎を解く鍵をみつけた」かのように思っていたでもあろう当時の高揚した雰囲気を、ときに苦悩を介してであれ、生き生きと伝えてもいる驚異の書である。本書によってようやく、フェレンツィという存在に、光があたる。


目次


まえがき  ジュディット・デュポン
謝辞
『日記』のための序  マイケル・バリント
編集注記

1932年の臨床日記
分析家の感情欠如/自然で科学的な態度/ヒステリーは身体による思考である/進行性分裂病――症例/相互分析とその適用限界/続相互分析/他者の意志による暗示、威嚇、押しつけ/退屈について/ヒステリー性抑圧、転換。カタルシス的退行によるその起源の暴露/カタルシスの破綻とその修復/相互分析のジレンマ/心的ショックの心因について/不快感の「肯定」について/相互分析の限界さまざま/相互性について/断片化/身体と心の機能様式/自然の男性原理、女性原理について/[相互分析――編者]/無意識状態における心的外傷/相互性の主題について/苦しみのテロリズムについて/相互性/精神病における現実回避の傾向についての一般的視点/葬儀人としての分析家/精神療法における癒し/二人子供分析/賞賛が必要/自生自我および外生自我(S・I)/激しい感情移入の利点と欠点/人格の分裂を現実のものと見なさないことから生じる障壁/ヒステリー発作について/症状と夢とカタルシスにおける心的外傷の回帰、抑圧と人格の分裂、カタルシス中およびカタルシス後の抑圧の解体/心の包帯/相互分析から一方的に分析される状態への移行/相互分析。実践による決断。分析の場に複数の患者がいる事態から生じる錯綜/心的内容および心的エネルギーの外移植ないし移植(S・I)/憎しみはすべて投影であり、そもそも精神病質的である/男性の同性愛と女性の同性愛の本質的相違/エディプス葛藤に必然的にともなう付加要素/幼い子供に押しつけられた「強制的な」能動的ないし受身的な性器的要求の長期的影響について/精神病患者の子供の運命/すべてのパラノイアの基盤としてのエロトマニア/分析家のリラクセーション/パラノイアと嗅覚/性的能力の条件としてのポルノファジー/ファルス礼賛理解へのヒント/男性的「反抗」の結果としての反‐同性愛/どちらが狂っているのか、われわれかそれとも患者か/患者‐分析家間の無意識的な感受性の闘い/[「相互分析」の歴史――編者]/外的な活動亢進および強迫神経症、女性同性愛によって覆われた分裂病様内的空虚。ほとんど二年にもおよぶ「堆積」期間のあとで突然改善へ方向転換。分析家による「呼び覚まし」の影響が明白(O・S)/外傷的自己絞殺/外傷反復強迫/同性愛的外傷、(女性)同性愛への逃避/罪意識の発生要因について/自己喪失(マイナス自我)/科学的真実発見/思考における自我の持続的無視(抽象化)/話すこと/意識化プロセスとは何か/リビドー理論と神経症理論のための理論的結論/最初の不安より前の時代への退行/教育分析が例外であってはならない!/情熱への道。終結/情熱/心身症/沈黙の義務/患者を憎む医者/自らの人格に関する混乱/技法。失敗(客観性のかわりに気分の動揺)(1)関与(2)告白(3)修正/耐えがたくなった感覚の心的逆備給/霊の世界との友好的関係/教え子との失敗/対象リビドーの持続的障害/正常な女性同性愛/同性愛からの転向/環境による認知の産物としての個人感覚(自らの大きさ、形、価値の感覚)/相互性の新段階/精神を病むものに特有のにおい/別の動機による女性のペニス願望/いつまでも続く睡眠中の外傷性呼吸障害/つづき/心的外傷の麻痺/恐ろしい呪いの持続作用(おそらく遠隔作用も)/他者の苦痛を和らげたい、あるいは他者を援助したい、才能を伸ばしてやりたいという強迫について/聞き落としについて 失策行為の一特殊形態/抑圧過程/不能の症例に対する苦痛緩和原則としての女性性/ユートピア。憎悪衝動の排除、残虐性の血讐的連鎖の打ち止め。認識コントロールによる全自然の漸進的馴致/成人心理学の子供への投影(誤り)/偽善と反逆児(アンファン・テリブル)/分裂病は「光化学的」模倣‐反応である/大人の情熱の、性格神経症と子供の性発達への影響/われわれ自身の情熱ないし情熱性の子供への投影/逆転移の効用と困難、すなわちその適用限界/鏡像と反転/論理的帰結と「努力貫徹」(性格の強さ)の「輝かしい成果」(はじめての?)としての自らのパラノイアへの洞察/覚醒しつつあるBの自意識(子供)/カオスのなかの秩序/羞恥心について/Bについての分析実験/除反応について/同一化対憎しみ/心的外傷における同一化/抑圧/倒錯は固着ではなく、恐怖の産物である/クリトリスとヴァギナ/エディプス・コンプレックスの見直し/激怒は抑圧過程になんらかの役割を演じるか/家族内における正常ないし病理的な性関係/何が外傷的か。攻撃かその結果か/患者との残酷なゲーム/果てしなく繰り返す「文字どおりの」反復――しかし想起は起こらない/「心的外傷」とは何か/分析を失敗に導いた個人的原因/自生的‐罪悪感/一人でいることに耐えること/心的外傷の再生のみでは治療効果はない/分析家の潜在的サディズムと色情亢進の危険/犯罪性についての覚え書/機能分裂の主観的描写/精神分析の罪科目録/心的外傷と人格の分裂、感情と知性の離断/大人自身に現実に存在する近親姦傾向を子供と患者へ投影。幼児的幻想と、現実に同じことが行なわれる場合との差異を理解しない/断片化への補足/自発性が活力を蘇らせ――挑発は気を滅入らせる/近親姦タブーの厳格さが近親姦への固着の原因か/精神的無能力への防衛手段としての極端な健康あるいは身体的適応能力/罪科目録の見直し/精神分析には暗示への不安がある/一人でいること/苦しみのテロリズム/ψにおける退行――分析中にψ‐胎児状態/相互性――必須条件/前進

訳者解説
索引


著訳者略歴

シャーンドル・フェレンツィ
Sandor Ferenczi

1873年ハンガリー、ミシュコルツに生まれる。ウィーン大学で精神医学を学んだのち、ブダペストで精神科医として治療実践を始める。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
森茂起
もり・しげゆき

1955年神戸に生まれる。京都大学教育学部大学院博士課程修了。博士(教育学)。現在、甲南大学文学部人間科学科教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「臨床日記」の画像:

臨床日記

「臨床日記」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/384頁
定価 5,616円(本体5,200円)
ISBN 4-622-04117-0 C3047
2000年11月22日発行
<ただいま品切です>