みすず書房

映画はその誕生から、百年を迎えた。この一世紀ほどの歴史から、無数の素晴らしい作品が生まれ、いまも生みだされ続けている。

膨大なフィルムの海を前にして、ここに気鋭の批評家による、新しい映画論の冒険が始まる。ヒッチコックからジャームッシュ、チャップリンからタルコフスキーまで、時代やジャンルの枠を超え、映画の〈画面〉自体によるイコノグラフィカルな分類学を打ち立てようとする、極めて野心的な試みだ。

画面の密度、フレームの運動、ショットの長さ、編集、物語定型としてのトポス……斬新なテーマの中から、映画はかつてない貌を現わし始める。『黒い罠』冒頭のワンシーン=ワンショットの緻密な分析から浮かび上がるスキャンダルとは何か? 『汚れた血』と『モダン・タイムズ』、そして、『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』の中でそれぞれ実践されるフレームの侵犯のありようとは?

映画というこの魅惑的な〈鏡の迷路〉を刺激的なガイドによって、読者は愉しく彷徨うであろう。