みすず書房

単行本『美の呪力』を、オリジナルタイトル『わが世界美術史』として巻頭に置く。

『日本の伝統』『沖縄文化論』『神秘日本』等々において日本の美を独自の視点から見つめ直した岡本太郎は、本書において、世界の美を見直そうとする。それは取りも直さず、世界美術史の基準を岡本太郎の眼差しによって書き直すことに他ならない。カナダ・エスキモーの石積みイヌクシュク、メキシコの巨石、グリューネヴァルトの血、マンダラ、火、夜、仮面、組紐文…。

西欧的秩序の逆方向から世界を眺め直す岡本の前に、古代と現代、野生と文明、西洋と東洋…、時空を超えて交錯する大いなるタピスリーが織りなされ、読む者は様々な美の現場へといざなわれる。

「ヨーロッパ再訪」は、1952年から53年にかけてのフランス、イタリア、エジプト訪問記。「芸術家たち」はピカソ、セリグマン、ジャコメッティ、アルプ、アトラン、ミロ…、爽やかな交友録。