フォトグラフとは「光で書く」という意味である。幼い日より、光に魅せられた人、瀧口修造は映像文化の時代に先駆的な仕事をした。本巻は、I写真の神話的感覚、II私の映画体験、III美術映画「北斎」、の3部からなる。
美術映画研究会第一回作品「北斎」の瀧口のシナリオ(本書所収)について、花田清輝はそのみごとな瀧口論「コロンブスのタマゴ」のなかで、こう語った。
「正直なところ、ぼくは、シナリオ『北斎』のほうが、ずっと好きなんだなァ。なんかこう、激情的なものを感じるぜ。しかも、その激情的なものを、あざやかに理智のカラでつつんで、ゆうゆうと落着きはらっているところ、まさにあの作品は、タマゴそのものというほかはないね。タマゴのようにムダがなく、タマゴのように清潔で、しかもタマゴのように滋味ゆたかで、さ。ナショナルなものを、インターナショナルな眼でみなおし、アヴァンギャルド芸術を大衆路線にのせるというのが、ぼく年来の主張だが、すっかり、瀧口修造に先鞭をつけられてしまった形だね。」
1932年、東宝の前身PCLに入社、日本で初めてのスクリプターとなった瀧口修造は、その後、シナリオ研究十人会、前衛写真研究会、「フォトタイムス」を通じて活動などを展開した。なお、全集第11-13巻「戦前・戦中篇I-III」も併せてお読みいただきたい。
■月報 石元泰博・中古智・細江英公・元藤?子