みすず書房

おのれ自身も含め、人間観察の達人だった。ちょっとした仕種や心の動きをかすめとって、ユーモラスな漫画に仕立てた。そこには、しゃれやアイロニーに富んだ短い文章がつけられ、才気と笑いの世界にみちびく。ユニークで新鮮な辻まことの仕事は、宣伝とか挿画につきものの制約をみじんも感じさせない。

この巻に収めたのは、広告画文といわれるものである。山とスキーの店の広告、電器メーカーのPR誌に絵入りでのせたセールスの手引き、ノイローゼ薬のための連作漫画、本や雑誌の挿し絵、カリカチュア。この種のものが一冊の本になるなんて、普通めったにないことだろう。そのめったにないことが、ここに実現した。