みすず書房

4700枚の空前の大作『神聖喜劇』が完成の時を迎える。しかし作家の創作意欲は衰えることを知らない。ただちに次なる冒険作『天路の奈落』からその後へと、新しい挑戦は続いていく。

連作エッセイ「遼東の家」「井蛙雑筆」それぞれから選りすぐった名品から、『神聖喜劇』の成立をめぐる作者自身の貴重な証言まで、更に自在さと鋭さを増していく文章の数々を収める。作家折々のスナップ写真と、それにまつわる回想を記した「一枚の写真から1〜4」も、ファン必読のエッセイだろう。

本巻は、『大西巨人文選』最終配本である。「『中期後半』から『晩期』の果てまで力を尽くして内容充実に精進するほかはない」と書く、控えめだが力強い作家の「おくがき」の通り、読者はなお遼遠に広がる大西巨人の文学世界に想いをゆだねよう。

巻末対話のゲストは哲学者の花崎皐平氏。「倫理の根拠をめぐって」と題し、白熱の討議を展開する。