みすず書房

情熱の庭師

DER LEIDENSCHAFTLICHE GARTNER

判型 A5変型
頁数 352頁
定価 6,050円 (本体:5,500円)
ISBN 978-4-622-04704-9
Cコード C1098
発行日 1997年1月21日
備考 現在品切
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情熱の庭師

〈人間の夢と記憶、願望と様相、比喩と象徴が、庭園の様相を呈している。人間は、鎮めがたい憧憬として心に浮かんでくるものを、かなえられない世界を、永遠にであれ束の間であれ実現するために、庭をつくる〉。

「エデンの園」を例に出すまでもなく、人間にとって庭は郷愁と憧憬の場である。言語の比喩表現の99パーセントが植物界から採られていることからも、それは証明できるではないか。そして庭に生命の息吹と秩序をあたえるのが、情熱の庭師である。

本書は、古代から現代まで、世の東西を問わず、花と庭と人間の交感の諸相を隈なく描いた、まさしく類例のない書である。品種改良や鉢植えについて述べられたかと思うと、話はゲーテに移り、現実界と想像世界が交錯する。なにしろ著者は、ドイツの詩人ボルヒャルトであり、自身庭づくりに心を注いでいた著者の思いが、詩的な文章で全編にわたり表現される。言い換えるなら、ボルヒャルトは造園するように文学作品を著し、詩作をするように庭作りに励んだのだった。また、厖大な花の便覧では育て方その他が詳細に綴られ、実用書としても工夫されている。とはいえ、本書は園芸書でもなければ庭園史でもない。真の「庭園文学」の姿が、ここにある。