みすず書房

バウムテスト研究【新装版】

いかにして統計的解釈にいたるか

LE TEST DU DESSIN D’ARBRE

判型 A5判
頁数 540頁
定価 8,800円 (本体:8,000円)
ISBN 978-4-622-08959-9
Cコード C3011
発行日 2020年9月8日
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バウムテスト研究【新装版】

被検者の描いた木からその深層意識や内面を理解する、バウムテスト。特別な器具を必要としないため、わが国の心理臨床の現場においても頻繁に用いられる心理テストである。
本書は、フランスでバウムテストの臨床と研究に従事してきた著者が遺した生涯唯一の本である。性格特性ごとに木の画に表れやすい特徴を178項目の「描画サイン」として抽出し、さらにそれぞれのサインの出現頻度を年齢ごと、性別ごとに導き出している。また、家族や兄弟との関係、食事や芸術への興味など、被検者の来歴と描画サインとの関連まで統計的処理をおこない、きわめて立体的かつ実用的な描画サインの確立へと至ったのである。
本邦では、長らくスイスの心理学者カール・コッホによるバウムテストが重用されてきた。しかし、ときとしてコッホの手法は描画の直観的で象徴的な解釈や、サインの多義性が指摘される。コッホの『バウムテスト』のフランスへの紹介者であるストラもまた、本書によって象徴的解釈からの脱却を試みたとも言えるだろう。
豊饒なフランス児童心理学の知見、圧倒的回数の統計的処理により導かれるサイン。本書は、わが国においてもバウムテストの研究史に刻み込まれるべき良書である。

目次

謝辞
第3版への序文
描画サイン番号一覧
いくつかの描画サインについての説明
「描画サインの布置」を作成するために用いた心理的項目

序章 本書の意図

第1章 バウムテストの歴史
I 研究史
II 描画サインとその心理学的意味

第2章 方法論
I 方法——実施方法と解釈
II 解釈の具体例

第3章 情緒成熟度尺度
I 情緒成熟度尺度
1. 不安焦燥感と受動性が交互に見られる時期
2. 自我の構築と自己の性を受け入れる時期
3. 自律性への進展
4. 発達段階の問題
5. 具体的描画例
II 各年齢ごとの人格特性
1. 就学前(4歳-6歳)
2. 小学校低学年(7歳、8歳)
3. 社会化の時期(9歳‐11歳)
4. 前青年期(12歳‐15歳)

第4章 描画サインの布置と心理学的意味の研究
I 方法と問題点——心理学的意味と描画サインの間に存在する関係性を確立するために
1. いくつかの問題点
2. 子どもの心理学的サインの布置
3. 子どもの描画サインの布置
4. 統計作業の結果
5. 一般的描画サインの布置
6. 同じ心理的項目に収束したサインについての検討。さまざまな収束のタイプ
II サインの布置とその解釈——心理的項目と描画サイン
1. 問題のある児童と家族、被検者の印象
2. 子どもと両親——よい親、悪い親、普通の親
3. 親子、きょうだい間のよい関係、悪い関係
4. ハンディキャップ、反応行動
5. 情動反応
6. 興味・関心
7. 周囲への関わり
8. 社会的関係
9. 対象関係
10. 活動様式
11. 知的水準
III 描画サインの布置間における検討——一般的描画サインの布置

第5章 環境の影響について
I バウムテスト以外の投影法検査による結果と検討。社会環境から見たバウムテストの考察
II 事例ピエール 描画13, 14
III 事例エグランチーヌ 描画15, 16
IV 事例マルチーヌ 描画17-24
V 描画の連続性——第1の木と第2の木の比較
VI 事例フランソワとジャン・ルイ 描画25-30
VII 学校環境での調査
VIII 事例アンドレ・K 描画31-34
IX 事例W 描画35, 36
X 事例ジェラール 描画37, 38
XI 事例ジャン・L 描画 39-42
XII 事例クロード・J 描画43, 44
XIII 事例ジャン・C 描画45, 46
XIV 事例ミッシェル・P 描画47, 48
XV 事例ローズ 描画49-52
XVI 事例セルジュ 描画53-56
XVII 事例ガスパール 描画57-60

結論

資料編
資料1 年齢別にみた描画サインの出現頻度
資料2 描画サインの経年変化
資料3 各年齢別のサイン出現比較
資料4 描画サインからみた心理的項目
資料5‐1 子どもの心理学的サインの布置
資料5‐2 各サインと心理的項目との関係
資料6 鍵サインとそのグループの描画サイン
資料7 一般的描画サインの布置

解題
訳者あとがき
文献