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2014.10.21イベント情報

第II部 チェス対局 羽生善治名人 vs. 小島慎也さん(1)

『ボビー・フィッシャーを探して』刊行記念イベント「盤上の冒険者たち」(2014年9月14日開催)ご報告

2014年9月14日に三省堂書店神保町本店で開催しました『ボビー・フィッシャーを探して』刊行記念イベント「盤上の冒険者たち ~将棋と詰将棋のマスターが語るチェスの世界」から、第II部の羽生善治名人と小島慎也さんのチェス対局の進行を、若島正さんとジャック・ピノーさんの大盤解説とともにご報告します。

【目次】

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【対局直前の抱負を一言】

  • ──小島さん、羽生名人との初めての公開対局とのことですが。
  • 小島  緊張しています(笑)。チェスをほとんど見たことがない方、今回初めてという方に、チェスって面白そうだなと思ってもらえるようなゲームにしたいと思いますので、今日はみなさんよろしくお願いします。
  • ──羽生名人、小島さんとは普段、練習では指しておられるとのことですが。
  • 羽生  ええ、ときどき。(小島さんとの練習対局が)ほんとうにとても勉強になっていますが、公の場で対局できるというのはまた、うれしいことです。それと、本の刊行記念ということで実際に対局を見てもらうと、“なんとなくこういう世界なのか”という臨場感が伝わるんじゃないかと思います。

【手番決めの結果、羽生名人の白番(先手)、小島さんの黒番と決定。各対局者の持ち時間は10分、ただし一手指すごとに30秒ずつ持ち時間が増える。対局者のお二人が握手をして、対局開始。】

[※以下、青枠の図は本譜、赤枠の図は検討用の図。★印の駒の動きは図中に矢印で示している]

図1

1. e4 c6 2. d4 d5 ————————@図1
  • ピノー  (白がd筋とe筋でポーンを突いた)最初の動きは、中央の4つのマスを支配するのが目標です。
  • 若島  最初は盤の中央をコントロールするのが大切であるということですね。
  • ピノー  黒がポーンをd5に進めたのは「カロカン」(カロカン・ディフェンス)という定跡です。次に白がポーンをe5に進める★のはナイジェル・ショート(イギリス人のグランドマスター)が積極的に使い始めた、いまどきの定跡です。

図2

3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 ————————@図2
  • ピノー  黒が動かした駒はすべて白い色のマスにあります。これは、ビショップが元の位置(c8)にいると働けないので、(ビショップの邪魔にならないように)ポーンを出してから、ビショップをf5へ出したところです。

図3

5. Be2 c5  ————————@図3
  • このまま中央を放置しておくと、白が少し有利になります。白が中央を黒よりも支配しているから。ゆっくりしているとまずいので、黒のポーンが積極的に(c5に)出ました★。
  • 若島  黒のほうが序盤で少し早目に動いたということですね。

図4

6. Be3 Qb6 7. Nc3 Nc6  —————@図4

[黒のクイーンがb6に出て、白のナイトがc3に跳ねた局面]

  • 若島  もしかして、いまこれ(白のb2のポーン)を放っておくと……(黒のクイーンがb2に飛んで★)取られてもいいんですか? もし取ったとしたら……
  • ピノー  そうなったときには(b2に来た)クイーンの行き場があまりないので……(それはよくないと思います)。(その場合は白に)ナイトc3がb5に跳ねていく狙いもありますし、黒の攻め駒が二つしか働かないことになるので。
    じつは10日間ほど前に、フランスのチャンピオンが黒番で、世界2位のイタリアのチャンピオンが白番という試合で、同じ局面が指されました。

図5

8. O-O Qxb2 ————————@図5
  • 若島  これは「キャスリング」(キングを囲う操作)★っていうんですよね。
    しかし(黒のクイーンが白のポーンb2を)取ってきましたよ。〈上で検討されていた筋〉
  • ピノー  この黒のb2のクイーンは数手かけてポーンを取りましたが、黒はほかの駒の指し手が遅れているので、白はポーンを取られても駒をさばくうえで指しやすくなります。
  • 若島  黒のほうはまだ王様もここ(あまり守りの堅くない場所)だし……。
    あ、「王様」じゃなくて「キング」ですね。ついつい将棋の人間は「王様」と言ってしまうんで……(笑)。
  • 会場  (笑)

図6

9. Qe1 cxd4 10. Bxd4 Nxd4 11. Nxd4 Bb4 ————@図6
  • ピノー  ちなみにフランスチャンピオンとカルアナ(ファビアーノ・カルアナ、イタリアのチャンピオン)の研究(本局と同様の局面になった最近の試合)では、黒番のフランスチャンピオンが負けてしまいました。
  • 若島  カルアナというのは、いま非常に強い、世界でランキング2位の選手ですね。
  • ピノー  22歳の選手。
  • 若島  フランスチャンピオンのマキシム(・ラグラーブ)は二年前に神戸に来て、羽生先生と、チェスと将棋の同時対局をした人です。フランスのグランドマスターなんですけども。その二人がつい最近(本局と同様の進行のチェスを)指して、白のカルアナが勝ったと。
  • ピノー  ここまで(棋譜の進行が)同じですね。
  • 〈Caruana vs. Lagrave http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1772618
  • 若島  じゃあ、(小島さんと羽生さんが)最新型をやっているということですね。はあー。
  • ピノー  羽生さんは将棋がお忙しいのに……(笑)。
  • 若島  どうしてそういうこと(チェスの最新型の情報)を知っているのか(笑)。
  • 会場  (笑)
  • 若島  羽生先生は将棋でも、定跡の最新型で若手相手に“どっちが(より深く)研究してるんだ”と思うようなことがときどきあるんですが、チェスでもそうだというのは……いつそんな時間があるのか、ほんとに不思議ですね。

図7

12. Rb1 —————@図7
  • 若島  白がルークで(黒クイーンb2に)当てました。ひょっとしたら黒ポーンb7が取られる★ような……。
  • ピノー  この局面になると、黒のビショップはこっち(初期配置のc8)にいたほうがよかったんじゃないかというふうにも見えますね。そちらのほうがd7に進んで王様の守りにも効きますし、b7のポーンを守るのにも効いています。黒のf5のビショップは自然な手に見えますが、もっと深い目で見ると弱点もありますね。
  • 若島  この局面は、黒はある程度研究手順を用意していないと怖いような、いっぺんに負けてしまうかもしれないような局面でしょうか?
  • ピノー  実際にマキシムさんはそうなっちゃった。
  • 若島  そうですか。実際に黒が負けた棋譜もある、という。
  • 若島  たとえば、白のナイトd4で黒ビショップf5をとって、黒のポーンがそれをとることになったら、黒の(d5とf5の)ポーンが離れ離れになってしまって、それも黒としては陣形がよくないということはありますか?
  • ピノー  その筋も一つありますが、まず白のナイトc3のほうが問題。
  • 若島  白のナイトc3を(黒のクイーンb2かビショップb4か)どっちかで取る?
  • ピノー  ただ、それもなかなか難しい。クイーンで取ったらこの手(白のルークb1が黒のビショップb4を抜く手)もありますし。

図8-v

  • [黒クイーンが白ナイトを取り、白ルークが黒ビショップを取った場合の局面 @図8-v
  • 若島  もしこうなったらこの黒のクイーンがどこに行くのか、白のクイーンe1と交換するのか★。
  • ピノー  黒クイーンの行き場はそんなにたくさんないですね。交換すると白のルークf1がここ(e1)から(縦に)出られますし、白のe2のビショップがななめにb5に出ると、白のe1のクイーンが縦に出る筋も発生します。
  • 若島  白のビショップb5で一回チェックがかかると★、(黒としては)嫌ですよねえ。
  • ピノー  白はビショップb5はすぐには指さない。なぜ指さないかというと、まだこのナイトd4のほうをb5に動かす手もあるから。
  • 若島  ナイトもルークもビショップもb5の地点に効いている。
  • ピノー  だから黒の得もあるけれども、駒のさばき方は白のほうが……。
  • 若島  白のほうが展開が速いということですね。
  • ピノー  今日、マキシムさんを呼びたいですね(笑)。
  • 若島  このあとどうするかをマキシムに聞いてみたい、と。

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