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トピックス

『サンパウロへのサウダージ』

クロード・レヴィ=ストロース/今福龍太 [今福訳]

ブラジルのプリズム

港千尋

「同僚と私がサンパウロに到着したとき、街はカーニヴァルのまっただ中にあった。」
今年百歳をむかえるにあたり、世界中でクロード・レヴィ=ストロースに関連する出版が相次いでいる。20世紀を代表する人類学者にして思想家を称えるイベントがしばらくのあいだつづきそうだが、いまからおよそ70年前にサンパウロに到着したとき、彼はカメラをぶらさげて夜の街に出かけてゆく、好奇心旺盛なひとりの青年だったのだ。庶民の暮らす地区では音楽が鳴り響き、人々が踊っているのが見える。黒人の男が家に入って踊ってもいいが、見るだけではだめだと言う。

「不器用なダンスしかできない不安のなかで、私たちは懸命に踊るはめになった。」
あのレヴィ=ストロースが、黒人たちといったいどんな風に踊ったのだろう! 本書は『悲しき熱帯』で知られているブラジル滞在時に撮影された写真を出発点に、その六十年後に、もうひとりの人類学者が同じようにカメラを片手にレヴィ=ストロースの足跡をサンパウロの町のなかに追った、ユニークな探求である。
同じ地点から時代を経て撮影する「再撮影」は、写真の歴史のなかでは主に建築論や都市論の試みとして知られている。ふたつの写真の並列から見えてくるのは、激変というしかない都市の様相でもあるが、本書がめざしているのは単なる都市の時代比較とはちがう。もうひとりの人類学者は、同じ都市の同じ場所でレヴィ=ストロースの視線や身振りを注意深く観察することにより、写真のうちに隠されている、意識されずにいたことの秘密へ降りてゆくのだ。
その意味で、本書は撮影という経験をとおしてしか理解できない、人類学的な知の在りようを探るきわめて刺激的な写真論である。カーニヴァルのブラジル人が言うことはつねに正しい。見るだけではだめなのだ。踊ることの秘密は、自ら踊ることをとおしてしか分からない。

copyright Minato Chihiro 2008

(レヴィ=ストロース 生誕100年によせて――
自身も写真家で、新著『レヴィ=ストロースの庭』(NTT出版)を11月17日に上梓されたばかりの港千尋氏に、このウェブサイトのために書評エッセイをおよせいただきました。)
港千尋『レヴィ=ストロースの庭』(NTT出版)http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100001914

◆「世紀の時間を抱いて」 今福龍太×港千尋の対話「レヴィ=ストロース・写真・ブラジル」開催

東京・茅場町のギャラリーマキで、2008年11月27日17時より、「世紀の時間を抱いて――レヴィ=ストロース百歳の誕生日前夜を祝う会」が 開かれます。『サンパウロへのサウダージ』『レヴィ=ストロースの庭』の刊行を記念して、今福龍太・港千尋の両氏の対話を共に聴く夕べ。参加にはお申し込みが必要です。下記リンクから、会場のギャラリーマキGALLERY MAKIメールアドレスあてお問い合わせ下さい。
GALLERY MAKI http://www.gallery-maki.com/2008/11/20/ryutapresent/

◆《レヴィ=ストロース 生誕100年》 les 100 ans de CLAUDE LEVI-STRAUSS

祝・レヴィ=ストロース満100歳。新刊、記念復刊、シンポジウム、雑誌特集、書店フェアほかさまざまにご案内いたします。




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