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池澤夏樹『風神帖』『雷神帖』

エッセー集成[『風神帖』10月16日刊、『雷神帖』11月刊]

「この十年ほどの間に書いたエッセーの類を二冊にまとめるということになった時、やはり何か対になったタイトルが欲しいなと思った。世に対になったものは少なくないが、いざ探してみるとなかなかいいものが見つからない。ペテロとパウロでは伝道の書みたいだし、伯夷と叔斉も立派すぎる。もっとあっさり乾と坤とか宇と宙というものもあるが今ひとつイメージがはっきりしない。かといって陰と陽としたのではきっと陰の巻が売れないであろう。
そこまで考えた時、ふと宗達のあの絵が浮かんだ。風神と雷神。あれほどはっきりしたイメージは他にない。なんといっても元気だし、しかも滑稽味があってにぎやかだ」(あとがき)

こうして池澤氏にとってひさしぶりの、『読書癖』以来のエッセー集が出ることになった。神格化された風と雷が向かい合って響きあう勇壮な2巻である(!?)。対をなすこの2冊はたんに文学の領域にとどまらず、広く文化や政治にかかわる現代的な省察から、さらには私的な経歴に及ぶ断想までを収めている。

まだ時季的に早いが、かかるエッセーの集成は正月の福袋に似ているかもしれない。魅力的な小物から大きなジャケットまで入っている。すなわち私的な断章から長尺の作家論、人びとの風景から本をめぐる考察までを収めたお買い得の2冊ということになる。連載とか書き下ろしでは抜けてしまう些事や細部が思わぬ真実を明かすこともある。北海道は静内から出土した祖先の錆びた斧への思い、異文化を論ずる際の基本的な姿勢(岡本太郎批判)から詳細なフォークナーやレヴィ=ストロース論、『苦海浄土』ノートに須賀敦子論、さらに辻邦生・中村真一郎・福永武彦・堀江敏幸・町田康まで。池澤ファンにとっては早めの嬉しい贈り物であろう。




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