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明田川融『沖縄基地問題の歴史』

「非武の島、戦の島」――この副題が象徴するものは

『沖縄基地問題の歴史』というタイトルは限定的で、事実、その名のとおりに本文は展開する。しかし、読後感としてのこるのは、「基地問題」をはるかにこえて、沖縄という島をめぐる歴史的・政治的・社会的構図の広がりと深さである。

たとえば、日米地位協定。最近も沖縄のみならず横須賀基地米軍兵士の犯罪をめぐって、国内法では及ばないこの制度のことが云々されたが、本書をみると、1960年の日米安保条約を中心に、この制度が日米両政府の目論見のもとに、なぜ現在まで維持されているのかがよくわかる。沖縄全島の二割近くを占め、本土にも点在する基地の存在同様、このような制度の存在を「所与」として受け入れるのではなく、あるいは観念レベルで「廃止」を訴えるだけでなく、その経緯をしっかり学びながら、この制度の問題を日々受け止めている沖縄の人々の声に耳を傾けたい。
また、たとえば、沖縄戦時に座間味、渡嘉敷島で起きた「集団自決」問題をめぐる赤松・梅澤対大江・岩波裁判。本書の校了直後の3月28日に、大阪地裁は原告である元戦隊長の名誉毀損の成立を認めず、原告の請求を棄却した(原告側は控訴)。これについては、本書だけでなく、宮城晴美『母の遺したもの 新版』(高文研)もご覧いただきたいが、この問題の背後には、戦争というあり方をこえて、歴史の中でつくりあげられてきた本土の沖縄に対する構造が見え隠れしている。

本書は、沖縄戦以前から現在にいたるまでの歴史を「基地問題」を中心に丹念に辿ったものだ。ジャケット写真にも反映されているように、一方での外交文書の博捜と読解、他方での沖縄現地の動向を合わせ鏡に、「復帰の主人公」の物語と「施政権者」や「潜在主権」保有者のつくりだす物語が対位法的に描かれている。
本書の基調にあるとおり、沖縄が、アメリカのアジア戦略、ひいては世界戦略にとって最重要基地であるのは、事実だろう。ならば、この発想をひっくり返してみてはどうか。沖縄は、日本という一島国国家という存在をこえて、近隣諸国はじめ、アジアの人々、ひいては世界の人々と結びつく交流の拠点、平和の礎の場としても考えられるのである。本書の副題にある「非武の島、戦の島」は、そのことを象徴している。




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