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『ダーウィンのジレンマを解く』

M・W・カーシュナー/J・C・ゲルハルト 滋賀陽子訳・赤坂甲治監訳

発生生物学という分野は、普段からやたらに熱い。学会を覗きに行くと、どっちを向いても憑かれたような目をした人たちが熱に浮かされたように議論しているといった具合。最近はその熱気が、進化生物学の広い範囲に感染しつつあるらしい。

ダーウィンは生物の種の変化について、“変化はランダムに起き、後から選択される”という、人類の知の歴史における最も根本的な洞察の一つを提出した。しかしその一方で自身の理論の抱えるジレンマにも気づいており、遺伝の仕組みに関しては“変化はランダム”というビジョンを固持しきれなかったという。同じジレンマは、遺伝の仕組みがダーウィンの時代には想像もできなかったような詳細なレベルで理解されて以降も、本質的にはジレンマでありつづけている。しかし本書『ダーウィンのジレンマを解く』によれば、ここ十数年の間に開けてきた新たな方向性が、そのジレンマをついに解きほぐしそうだ。

そのこと自体については本を読んでいただくことにして、ここで紹介しておきたいのは、本書が「進化可能性」という重要概念を見事に説明しているということだ。著者二人は、細胞骨格、胚発生などの発生学的なテーマのほかに、アロステリック酵素の研究のような一見かなり違う分野の研究に従事した経歴ももつ。しかしそういった生物界の異なるスケール、異なる次元のシステムに共通に見いだされる設計方針が「進化可能性」なのだ。それは要は、ある有益なパターンをがっちり保存することでそれ以外の部分が拘束解除されるような設計、そして、それらのパターンが“弱く”連系するという構造なのだが、その詳細はもちろん本書を読んでほしい。

著者らは、「進化可能性」を担保できる設計方針こそが、生物系のあらゆるレベルで保存され、機能しているはずだと見ている。その直接・間接の証拠が、21世紀の生物学、いや、物理学者も巻き込んだ幅広い科学の営みによって次々に発見され、生命全体についての人類の理解が飛躍的に拡がるのではないか。そんな期待を掻き立てる本だ。




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