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荒川洋治『文学の門』

みすず書房から出させていただいた荒川洋治さんの最初の本は『夜のある町で』。もう十年以上も前になる。目をひかれる書名で、どんな意味なのか考え出すと不思議な気持ちになってくる。けれども、収録文のタイトルのなかにもう一つ、書名にしてもよさそうなものがあったので、その「エッセイ革命」という言葉をオビの背に刷りこんだ。

二冊目の『忘れられる過去』。これも奇妙な書名で、「忘られぬ過去」などと言いまちがわれたこともある。オビの背文字は「生きるために」で、やはり集中の一編のタイトルから拾った。この本は講談社エッセイ賞を受け、多くの読者によろこばれたから、ご記憶の方もいることと思う。

三冊目は『世に出ないことば』。ここまでの書名、声に出してみると、どれも八音である。七音に余るところに、どこか粘りがあって気にかかるのがよい。さて、オビ背はどうするか。これまでとちがう工夫をしてみたい。迷ったすえに、もう荒川さんの言葉をつかわないことにした。そこで「ますます快調」などと書いたところ、刊行を祝う席で一同の笑いを誘ってしまった。詩人の言葉に及ばないのは当然である。

そこで四冊目は、本のデザインを変えることに決めた。書名も短く『黙読の山』として、装画もそれまでの萱慶子さんから、とつぜん、ジャクソン・ポロック! オビの背には、荒川さんの文章が微妙に進化しつつ不変であることをふまえつつ、「いつだって真剣」と書いた。笑いをとるつもりはなく、硬派にかまえたのだが、やはり一座の微苦笑で迎えられた。

こうなると、五冊目はどうするか、むずかしい。書名に「文学」を入れることだけは念頭にあった。こんどの本は、それがテーマなのである。しかし、オビ背には困った。あれこれ捻ったあげく、「あとがき」から「考えたい」と「散文」という二語を抜き出して「考えるエッセイ」ともじった。これで三たび、詩人の力を借りることになった。荒川さんは「五冊目。一つの区切りであり、感慨がある」と書いておられる。こちらにしても思いは同じで、なにか一巡したような気がする。なにしろ「文学の革命は、エッセイの革命からはじまるのだ」(『夜のある町で』より)。
ところで『文学の門』のカバー装画は、ニコラ・ド・スタールの「コンポジション」という油彩だが、こうして向き合っていると、門をくぐろうとする人のかたちに見えてくる。そんなこと、ありませんか?

みすず書房編集部 尾方邦雄




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