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アレックス・ロス『20世紀を語る音楽』

柿沼敏江訳 [全2巻]

『出版ダイジェスト みすず書房特集版』2010年12月11日号のために、細川周平氏(音楽学、国際日本文化研究センター教授)より、すばらしい書評エッセイをお寄せいただきました。

20世紀が語る音楽

細川周平

この浩瀚な書は1906年、リヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』のグラーツ上演にシェーンベルク、ベルク、マーラー、それにひょっとするとヒトラーが集まったことから筆を起こす。そこにはシェーンベルクをモデルとする、トーマス・マン『ファウスト博士』の主人公レーヴァーキューンも臨席していた。実在と虚構の作曲家の大いなる宴、そこには保守派と革新派、高踏派と大衆派、国際派と民族派の間の不協和音はまだ聞こえない。「過去と未来が衝突し、数世紀が一夜にして過ぎ去った」。数年後、シェーンベルクは「難解な」音楽、大衆にとっては「雑音」にすぎない表現に向かう引き返せない一歩を踏み出した。ハムレットの「後は沈黙」をもじった原題「後は雑音」は、雑音と楽音と沈黙の交錯から20世紀音楽史を描く本書の基本デザインを、含蓄深く伝えている。

劇的な書き出しからふと、リチャード・パワーズの『舞踏会へ向かう三人の農夫』を思い出した。第一次世界大戦勃発前夜に撮影された農夫の写真から、政治家、芸術家、企業家、革命家が入り乱れる20世紀の歴史全体を展開する(現像する)パワーズフルな手法は、膨大な数のこぼれ話を、歴史的な文脈にジグソーパズルのようにはめこんでいく本書の眩惑的な書法にヒントを与えたのではないだろうか。年代順でも国別でも芸術思潮別でも技法の進化論でもない。一応、1933年、1945年で分かれる三部構成を採っているが、つねに他の時代と各地の出来事が参照され、思いがけぬ音や人や思想のつながりを教えてくれる。パワーズ同様、どこに伏線が潜んでいるかわからない。ヴァイルとボブ・ディラン、ブーレーズとコープランド、ブリテンとペンデレツキ、シュトックハウゼンとビートルズが実際に、あるいは美学的に出会う。シベリウスのロマン主義をコルトレーン、アルヴォ・ペルト、モートン・フェルドマン、ジョン・アダムズが変奏=変装していく。
〔……〕

(エッセイの冒頭を、著者のご同意をえてここに転載いたしました。全文は、出版梓会の発行するタブロイド版出版情報紙『出版ダイジェスト みすず書房特集版』2010年12月11日号の一面に掲載されています)

[各紙誌書評掲載]

小沼純一氏(『音楽の友』1月号)、片山杜秀氏(読売新聞12月19日)、奥泉光氏(朝日新聞12月12・19日)をはじめたくさんの書評をいただいています。

『20世紀を語る音楽』  ―“The Rest Is Noise”―

「頁を繰ると、巨人たちが支配する旧いお伽噺の世界から、見覚えのある20世紀の情景へと物語は進んでいく。そこでは誤りを犯す人間が、別の誤りを犯す人間が引き起こす様々な状況や出来事に反応し、それらを映し出し、音の符号によって影響を与えていく場面が繰り広げられる。だからまた頁をめくることになる。稀に見る偉業である」
――リチャード・タラスキン(音楽学)

「アレックス・ロスが書いた20世紀音楽の手引きは、様々な人間と出来事についての興味つきない物語でもあり、現代文化の形式とスタイルについての歴史書でもあり、また、社会と政治と科学技術の変化についての研究書でもある。本書は、文化史というものが書かれなくてはならない手法で書かれた文化史である。つまりここでは、ひとつの力強い物語が多くのレヴェルで同時に作用している。一冊の本にこれ以上何が望めようか? 知的に、巧みに、明晰に書かれていることだろうか? それなら、これはまさにそうした本である」
――ルイ・メナンド(アメリカ文学・思想史)

「アレックス・ロスが大胆にも楽譜を使わずに比喩的、記述的な言葉を生き生きと用いたことは、本書がこれまで他の本がほとんどできなかったようなやり方で、音楽という現実の素材と取り組んでいることを意味している」
――『タイムズ・リテラリー・サプルメント』

「難しすぎてめったにとりあげられないテーマを扱った、読みやすく、魅力的な、素晴らしい本」
――コリン・グリーンウッド(レディオヘッド)

「『現代音楽の危機』はいつもあったように見えるけど、何か突拍子もない奇跡が起きて、一人の人間が出口を見つける。そんな不可能に思えることが私に希望を与えてくれる。アレックス・ロスの信じられないほど内容豊かな本で、数多くの音楽制作者たちの、あらゆる種類の創作活動を通読すれば、誰でも音楽への情熱に、また火がつくことになるだろう」
――ビョーク

「クラシック音楽は死んだといつも聞かされていた人は、まずそれは生きていると納得するに違いない」
――アダム・カーシュ(『ニューヨーク・サン』)




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