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太田邦史『自己変革するDNA』

「生命の設計図」にもたとえられてきた遺伝子の本体DNAは、じつは不変の静的な存在ではない。同一のDNAをもって誕生する一卵性双生児は、齢とともに異なるDNAをもつようになる。がんは進行するとDNA配列に重複や欠損が起こり、染色体の数が変わる。近年、超高速DNA配列解析装置が改良されてヒトの全遺伝子情報が簡便に解読できるようになり、こうした研究が進んだ。
「DNAは環境に応じて自らを書き換え、変化する」と考えることで、生物のさまざまな現象が説明できるのではないか──このほとんど議論されていない画期的な概念を、遺伝子組換えを専門とする研究者が、変異の化学的構造からとき明かす。

ヒト以外に目を移すと、生物の多種多様ぶりは奇跡に近い。地球上で何が起きるかは予測不能。そんな環境に適応すべく、あらゆるタイプの生物が存在するかのように見える。生命活動の本質は、とにかく変化しつづけ、多様でありつづけることにあるらしい。「自己変革するDNA」がその基盤をなす。

変化と多様性が大切だというのは、人間社会にも通用する。「うまく行きすぎる」「一人勝ち」する企業や組織は危険。状況に一点集中で適応しているから、ひとたび外部環境が変わるや、あっという間に危機に直面する。「内部にある程度、多様性や無駄を持っていなければ激動する社会に適応できない」。そして外側はいつも同じに見えて、内側はたえず変化している組織は強いはずだ。

分子生物学の最先端を行きながら、45歳で理化学研究所から東京大学教養学部教授に転身した著者の講義が本書のベースになっている。昨今の「事業仕分け」で基礎科学研究の予算がバッサリ切られる事態に、専門外の人々にも普段から基礎科学の意義を伝える努力をせねばと一大奮起、初めての書き下ろしとなった。
10年後には、「自己変革するDNA」という概念は、きっと常識になっているだろう。




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