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『レヴィ=ストロース 夜と音楽』

今福龍太

20世紀を代表する知性であり、構造主義の中心人物としても知られるレヴィ=ストロース。その思想を私たちはどれだけ知っているだろう。本書はレヴィ=ストロースという途方もなく深い森に分け入るための案内図だ。

ただその道はまっすぐではない。遺された膨大な著作や100年に及ぶ生涯を時系列に沿って一直線に追うのみでは、人類数千年の精神の星座をひとつの頭脳に収めた碩学の芯に触れたことにはならないだろう。

レヴィ=ストロースの思考を正確に捉える方法、それは、音楽ではないだろうか。主著である『神話論理』四部作は、「序曲」からはじまり、「ボロロの歌」「行儀作法についてのソナタ」「オポッサムのカンタータ」「鳥たちの合唱」と、およそ学術書とは思えない展開をみせる、驚くべき書物であった。自由な旋律と稠密な思考が恐るべき一致をみせるのがレヴィ=ストロースのひとつの特徴といっていいだろう。本書は彼のスタイルに倣い、音楽的歩行を試みる。

〈静謐さ。レヴィ=ストロースの思想、それが語られる言語によりそう冷静な声の印象は、まさに静謐とよぶにふさわしい特質をそなえている。ひそやかでありながら、途方もない強度を内に秘めた重奏低音である。奥深い森のなかから谺する百獣の密めき声である。ただ静かなだけではない、“calm”(静けさ)ということばのなかに“kauma”(ギリシア語で「太陽の炎熱」)という語源が隠されていることが示すような、生命の充満と昂揚を知り尽くした上での静謐さである。〉
(あとがき)

著者は一個の耳になって、深い森に遺されたレヴィ=ストロースの思考の「種」を丹念に拾い集め、その核心部をいきいきと響かせる。読む者は、人類の沈黙の響きをききとるレヴィ=ストロースの偉大な耳に、いつしか遭遇するだろう。




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