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2019.01.18トピックス

この企業が中国人の生活を変えた――『アントフィナンシャル』巻頭序文を一部公開(3/4)

廉薇・辺慧・蘇向輝・曹鵬程『アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム』永井麻生子訳

(黄益平氏による序文を一部公開)

アントフィナンシャルを左右する第二の要素は、デジタル技術の急速な進歩である。デジタル技術の進歩は、アントフィナンシャルの「金融の夢」に「技術」という支柱を与えた。まず、なぜ既存金融機関が所得が低い80%の顧客へのサービスを忌避するのかを考えてみよう。それは、それらの顧客が往々にしてハイリスクであり、信頼できる情報もないからである。また、抵当に入れられる資産もないため、これらの顧客に金融サービスを提供することは、顧客獲得のためのコストが嵩むだけでなく、信用評価も難しい。デジタル技術の中核はスマートフォンとビッグデータ分析である。スマートフォンによって大量の潜在顧客に直接アプローチすることが可能となり、実店舗を設置して顧客を獲得する必要がなくなったため、顧客獲得のためのコストを削減できるようになった。ビッグデータ分析では、顧客に対面せずともその信用状況を評価することができ、インターネットプラットフォームのロングテール効果によって、金融サービスの限界費用をほぼゼロにまで抑えられる。すなわち、デジタル技術の最大の優位性は、インクルーシブファイナンスの発展をサポートできる点にあるのだ。高度に進化したデジタル技術がなければ、デジタル金融は今日のようなレベルに到達することはできなかったし、アントフィナンシャルも現在の規模にまで成長することは不可能だっただろう。

テクノロジーの作用は、アリペイの成長過程においては一目瞭然である。アリペイは2003年にリリースされ、約5年かけてユーザー数1億人を突破した。2009年、最初のモバイルクライアントを世に送り出すと、アリペイはほぼ「一人に一つ」の決済ツールとなった。2016年、アリペイの登録ユーザー数は8億人を超え、実名認証済み〔補注:中国ではサービスの利用にあたり、利用者本人の氏名や身分証情報の登録が課される場合がある〕ユーザー数は4.5億人となった。これと同様に、コンピューティング技術の進歩も極めて重要である。アントフィナンシャルのデータによると、アリペイの決済取引1件当たりのコストはすでに0.02元以下まで抑えられている。1秒当たりの処理件数は、2010年には最大で数百件程度であったのが、現在では12万件/秒に達しており、いまなおその能力は急速に伸びつづけている。日本のとあるスーパーマーケットの店長は、アリペイ、あるいはその競合相手であるテンセントのウィーチャットペイ(微信支付)での支払いを歓迎しているという。銀聯カードの加盟店手数料が3%と高いのに対し、アリペイとウィーチャットペイの手数料は0.1%しかかからないからだ。

阿里小貸と網商銀行では、「申請3分、与信1分、関与人員0」の「310モデル」を実現したが、これには、潜在顧客に対する信用調査がすでに完了しているという前提条件があった。既存金融機関の信用評価において問題であったのは、零細企業および低所得者層の信用リスクを分析する有効な方法がなかったことと、社員を派遣して行う調査には高いコストがかかることであった。こうした難題の解決を支えたのがビッグデータ分析である。現在までに、阿里小貸は500万以上の顧客に貸付を行っているが、その平均金額は3万元以下、平均融資期間は7カ月である。網商銀行は1000万の零細企業にサービスを提供するという目標を掲げているが、それはビッグデータ分析によって初めて実現できる規模だと言えよう。現在、彼らは地方政府を説得し、企業登記情報、納税額、給与や公共料金の支払い状況等のデータを利用して企業情報の共有プラットフォームを構築しようとしている。アントフィナンシャルはすでに、2015年に芝麻信用を設立し、個人を対象とした信用システムを構築している。




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