みすず書房

エーリヒ・ケストナー

Erich Kastner

1899-1974。ドレスデンに生まれる。ライプツィヒ大学でドイツ文学を学び、1927年、ベルリンへ移って新聞・雑誌に演劇批評などを書く。1928年、詩集『腰の上のハート』『エミールと探偵たち』刊行。大成功をおさめた『エミールと探偵たち』に続いて、挿絵画家ヴァルター・トリヤーとのコンビで発表された痛快でユーモアあふれる作品は世界中で読まれ、ことに日本では、明るく前向きな児童文学作家としてのみ語られてきたが、ドラマ、台本、評論、詩集など、むしろ大人のための作品を数多く書いた。ナチス政権下の時代、自伝的モチーフもそなえる、時代と風俗の痛烈な風刺小説である『ファビアン』(丘沢静也訳、みすず書房)も焚書に付され、執筆禁止となったが、亡命をせず、終戦を迎える。近年、本格的な伝記や〈原典版 ファビアン〉とも呼ぶべき『犬どもの前に行く』(2013)が出版され、シニカルな風刺家としての、もうひとつの姿がクローズアップされはじめている。