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偶然と必然

現代生物学の思想的問いかけ

RANDOMNESS AND NECESSITY


著者はまず、古くして新しい問題、生物とは何かという問題をとり上げ、現代考えられうる最も科学的・客観的な方法でこれにアプローチしようとする。そして、コンピューターによる何重かのふるい分けの思考実験から、生物の特徴は不変の再生、合目的的な活動にあるという結論に到達する。さらに、著者も偉大な開拓者の一人である現代生物学の立場に立って考察を進め、これらの特性がそれぞれ、核酸とタンパク質に顕現されていることを、遺伝情報の複製・伝達、種々の酵素の驚嘆すべき整然たる構造・機能の説明によって示している。

だが、機械的ともいえるような保守的な合目的的なプロセスのなかに、進化はどのようにして根を下して、新しいイノヴェイティヴなもの、創造的なものを生物圏に送りだすのであろうか。進化の要因は、不変な情報が微視的な偶然による擾乱を受けることにある。このように偶然に発した情報は、合目的的な機構により、あるいは取入れられ、あるいは拒否され、さらに忠実に再生・翻訳され、その後、巨視的な自然の選択を経て必然のものとなる。

このような中心思想に立って、教授は生物のうちで最も特異なもの、約五十万年の昔から思考力の進化を推し進めてきた人類に関する重大な問題に、大胆な、挑戦的な試論を展開する。随所で、ギリシャ以来の多くの有名な思想、特に現代に影響力をもつへーゲル、マルクス、ベルクソン、テイヤールなどの思想が俎上にのせられ、生気説、物活説の宣告のもとに退けられている。

したがって本書は刊行以来、広く一般の反響を呼び、左右の思想界から激しい批判と反論を受けている。本訳書がわが国の広い読者層に読まれ、また専門の方々の鋭い批判の起ることを願うものである。


「偶然と必然」の著訳者:

ジャック・モノー
Jacques Lucien Monod
1910年フランスに生まれる。1934年Paris大学助教授となる。1945年Pasteur研究所に入り、1954年以後同研究所細胞生化学室長。1957年来Paris大学教授兼任。微生物の酵素合成の遺伝的制御を研究し、1965年Jacob、Lwoffとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。コレージュ・ド・フランス教授、Pasteur研究所所長を兼ねていたが1976年6月死去。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
渡辺格
わたなべ・いたる
1916年松江市に牛まれる。1940年東京大学理学部化学科卒業。理学博士、医学博士。慶應義塾大学名誉教授。著者『人間の終焉』(朝日出版社、1976)『「第三の核」を求めて』(ニュートン・プレス、1999)ほか。訳書 テイラー『人間に未来はあるか』(共訳、みすず書房、1969)ステント『バクテリオファージ』(共訳、岩波書店、1972)同『進歩の終焉』(共訳、みすず書房、1972)ルリア『分子から人間へ』(共訳、文化放送、1974)ほか。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
村上光彦
むらかみ・みつひこ
1929年佐世保に生まれる。1953年東京大学文学部仏文学科卒業、現在成蹊大学名誉教授。訳書『ド・ゴール大戦回顧録』(共訳、1960-1966、改訳復刊1999)カストロ『マリ=アントワネット』(1972)レイン『好き? 好き? 大好き?』(1978)ブローデル『日常性の構造』1・2(1985)『世界時間』1・2(1996、1999)(以上みすず書房)ヴィーゼル『死者の歌』(1970、晶文社)『そしてすべての川は海へ』(1995、朝日新聞社)『しかし海は満ちることなく』(1999、朝日新聞社)ほか。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「偶然と必然」の画像:

偶然と必然

「偶然と必然」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/256頁
定価 2,940円(本体2,800円)
ISBN 4-622-00428-3 C0040
1972年10月30日発行

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