夜の合戦【新装版】
16-17世紀の魔術と農耕信仰
I BENANDANTI
判型 | 四六判 |
---|---|
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-01211-5 |
Cコード | C0010 |
発行日 | 1986年1月28日 |
備考 | 現在品切 |
I BENANDANTI
判型 | 四六判 |
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定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-01211-5 |
Cコード | C0010 |
発行日 | 1986年1月28日 |
備考 | 現在品切 |
ギンズブルグは歴史を見る新しい視角を開いた。さきに邦訳された『チーズとうじ虫』は、16世紀の焚刑にあった粉挽屋メノッキオの世界像の解読によって読者を驚嘆させたが、本書はその十年前の処女作で、ここに示された斬新な手法と主題の提示は、まさに彼の代表作にふさわしい。
メノッキオの生きたと同じ時代、同じ北イタリアのフリウリ地方には、〈ベナンダンテ〉とよばれる一群の男女がいた。胞衣すなわち羊膜をまとって生まれてきたことが、彼らの運命を決定づける要素となったらしい。彼らは、肉体を残したまま霊魂となって、作物の豊凶を賭け、魔法使いたちとの〈夜の合戦〉に赴くという。それは、キリスト教以前からヨーロッパ各地に存在した豊饒信仰が、周縁の地に生きのびていたのである。リトゥアニアの狼男のように。
ギンズブルグは、この民間信仰をめぐる厖大な異端裁判の記録に、起原も質も異る二つの文化が交差し浸透するさまを見る。審問官の上層文化と民衆の文化とである。そして彼らの間の応答から、微妙なイメージの差異を読みとることによって、農民の心的世界を鮮かに再構築していく。この歴史からは、民衆の息吹きが聞こえる。