みすず書房

ウィーン精神 1

ハープスブルク帝国の思想と社会

THE AUSTRIAN MIND

判型 A5判
定価 6,380円 (本体:5,800円)
ISBN 978-4-622-01768-4
Cコード C3022
発行日 1986年8月22日
備考 現在品切
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ウィーン精神 1

本書は、ウィーンを中心に、1938年オーストリアのナチス・ドイツへの併合によって終焉を迎えるハープスブルク帝国世界を描くものである。現在、想起されることの少ないヨーロッパ最後の大帝国。しかし、そこにはまれに見る豊かな文化が息づいていた。クリムト、マーラー、シェーンベルクらの芸術家をはじめ、フロイト、ブレンターノ、フッサール、ブーバー、ヴィトゲンシュタイン、ルカーチなど、20世紀思想の出発点となった思想家の大半がそこには含まれている。本書は70余名を対象に、なぜウィーン、ハープスブルク帝国から、これほどの画期的な思想が生み出されたのかを探求する。叙述は、政治、経済、法律、歴史、哲学、宗教、文学、音楽、造形芸術、医学、心理学、都市計画等々、ハープスブルク帝国において重要なすべての分野にわたっている。広大な視野でハープスブルク帝国の思想と社会の全体像を描いた稀有な書といえよう。
絵画のクリムト、シーレ、音楽のブルックナー、マーラー、いま古きウィーンの芸術家たちが人々の関心を呼んでいる。
「ここにおいて音楽の不死の七星、グルック、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ヨーハン・シュトラウスが世界を照らし、ここにヨーロッパ文化のあらゆる流れが合流した」(ツヴァイク)と讃えられる古都ウィーン。「とやかく言っていると、クリムトが新しい絵を描く。ロラーが『トリスタン』や『フィデリオ』の舞台装置を一新する。マーラーが新曲をひっさげて出てくる。ミルデンブルクが歌う。すると自分は自分に言うのだ。——とはいえ、願いにかなう人生を送るには、ここしかない」(ヘルマン・バール)。〈昨日の世界〉にあって、ウィーンはまさに芸術の都、創造性の母胎であった。
「ジョンストンは外国人であるため先入観にとらわれず、オーストリア国内の争いから生まれた憎しみ・嫉妬・対立にまどわされず、われわれオーストリア人のほとんどが気づかなかった大陸を示すことができた。そこでは20世紀において世界を照らす光となる思想が躍動していたのである」(ウィーン大学歴史学教授フリードリヒ・ヘール)。