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野生の思考

LA PENSEE SAUVAGE


野生の思考La Pensee sauvageは、1960年代に始まったいわゆる構造主義ブームの発火点となり、フランスにおける戦後思想史最大の転換をひきおこした著作である。

Sauvage(野蛮人)は、西欧文化の偏見の凝集ともいえる用語である。しかし植物に使えば「野生の」という意味になり、悪条件に屈せぬたくましさを暗示する。著者は、人類学のデータの広い渉猟とその科学的検討をつうじて未開人観にコペルニクス的転換を与えsauvageの両義性を利用してそれを表現する。

野生の思考とは未開野蛮の思考ではない。野生状態の思考は古今遠近を問わずすべての人間の精神のうちに花咲いている。文字のない社会、機械を用いぬ社会のうちにとくに、その実例を豊かに見出すことができる。しかしそれはいわゆる文明社会にも見出され、とりわけ日常思考の分野に重要な役割を果たす。

野生の思考には無秩序も混乱もないのである。しばしば人を驚嘆させるほどの微細さ・精密さをもった観察に始まって、それが分析・区別・分類・連結・対比……とつづく。自然のつくり出した動植鉱物の無数の形態と同じように、人間のつくった神話・儀礼・親族組織などの文化現象は、野生の思考のはたらきとして特徴的なのである。

この新しい人類学Anthropologieへの寄与が同時に、人間学Anthropologieの革命である点に本書の独創的意味があり、また著者の神話論序説をなすものである。

著者は1959年以来、コレージュ・ド・フランス社会人類学の教授である。


「野生の思考」の著訳者:

クロード・レヴィ=ストロース
Claude Levi-Strauss
1908年ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年、哲学教授資格を得る。1935-38年、新設のサン・パウロ大学社会学教授として赴任、人類学の研究を始める。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設。1982年退官。アカデミー・フランセーズ会員。著書『親族の基本構造』(番町書房1977-78、青弓社2000)『人種と歴史』(みすず書房 1970)『悲しき熱帯』(中央公論社1977)『構造人類学』(みすず書房1972)『今日のトーテミスム』(みすず書房1970)『野生の思考』(みすず書房1976)『仮面の道』(新潮社1977)『神話と意味』(みすず書房1996)『構造・神話・労働』(みすず書房1979)『はるかなる視線』(みすず書房1986、1988)『やきもち焼きの土器つくり』(みすず書房1990)『遠近の回想』(共著、みすず書房1991)『レヴィ=ストロース講義――現代世界と人類学』(平凡社ライブラリー2005)『みる きく よむ』(みすず書房2005)『ブラジルへの郷愁』(みすず書房1995)他。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
大橋保夫
おおはし・やすお
1929年に生まれる。京都大学文学部仏学料卒業。京都大学名誉教授。1998年歿。著書『フランス語とはどういう言語か』(共著、駿河台出版社1993)、訳書 マルンベリ『音声学』(白水社1959)レヴィ=ストロース『神話と意味』(みすず書房1996)、編書 レヴィ=ストロース『構造・神話・労働』(みすず書房1979)など。論文「記号学的に見た自然言語――コード変換の基礎」(『年報社会心理学』1974)「ソスュールと日本――服部・時枝言語過程説論争の再検討」(『みすず』1973、8、9月号)「メタフォールの考案」(『人文』1972)など。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

鎌田浩毅(京都大学大学院教授)
<2009年11月21日号:週刊東洋経済>

この本の関連書


「野生の思考」の画像:

野生の思考

「野生の思考」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/408頁
定価 5,040円(本体4,800円)
ISBN 4-622-01972-8 C3010
1976年3月30日発行

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