みすず書房

自己と他者

SELF AND OTHERS

判型 四六判
頁数 240頁
定価 3,190円 (本体:2,900円)
ISBN 978-4-622-02347-0
Cコード C1047
発行日 1975年9月25日
備考 現在品切
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自己と他者

人間と人間との間で演じられる相互作用におけるもっとも基本的でもっとも微妙な「自己と他者」の関係を、著者は電子顕微鏡を透して見るように強拡大して見せる。人間関係のからみあいを凝視して、螺旋的で錯綜したドラマを図式化し展開する。その無機的な操作のなかに、まなざしのなかに、ふいに著者独自の人間へのまた患者への近しさがきらめく。分裂病の治療経験にもとづくいくつかの症例とジュネやサルトル、ドストエフスキーの作品のなかの人間像がいきいきと捉えられ、少年の心に対してなぜか裏目裏目にあらわれる母親の言動や「罪と罰」のラスコーリニコフが母親の手紙によってじりじりと追いこまれる極限の世界を、あますところなくうつし出す。人間は人間にとって何であるのか。人間関係の愛と信頼の芽と、誤解と束縛と憎悪の根、そして絆。
1927年イギリスに生れた精神科医、タヴィストックで活躍した著者の本領を示す対人関係論。

目次


第一部 対人経験の諸形式
1 空想と経験
2 空想とコミュニケーション
3 見せかけと逃避
4 経験の対位法
5 死の冷たさ
第二部 対人行動の諸形態
6 補完的アイデンティティ
7 承認と不承認
8 共謀
9 にせの境地と安住しえない境地
10 属性付与と命令
付録 二者関係のための記号法
訳者あとがき
主要文献

書評情報

鷲田清一
朝日新聞「折々のことば」2016年12月9日