みすず書房

ドイツの青春 1

ERINNERUNGEN UND GEDANKEN

判型 四六判
定価 3,630円 (本体:3,300円)
ISBN 978-4-622-03360-8
Cコード C1022
発行日 1993年12月24日
備考 現在品切
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ドイツの青春 1

トーマス・マンの第3子として生まれ、『近代ドイツ史』(小社刊)で知られる歴史家の自伝的回想である。1909年に誕生した著者の幼児期から、第1次世界大戦、ヴァイマル共和制を経て、1933年のヒトラーの政権掌握の時代までをいきいきと語る。歴史家の客観的判断と、子供の眼から見た主観的把握が織り合わされて、たぐい稀な作品となった。
「われわれは、ほとんどいつでも静かにしていなければならなかった。騒いで仕事の邪魔をすると、父の落とす雷は恐ろしかった。」本書はマン家の人々——父トーマス、母カチア、才気煥発な姉エーリカ・兄クラウス、弟妹たち——と、伯父ハインルヒなどの親族を抑制された筆致で描き、『魔の山』を創出する重要な契機も明らかにされる。
幼き日、祖母の読むディケンズ『二都物語』に耳を傾け、十歳のときシラーの『三十年戦争史』を読む。そして両親からの独立の過程で経験することども——ボーイスカウト活動、ザーレム校の寄宿学寮生活、ミュンヘンでの大学生活の開始、ベルリンでのリカルダ・フーフとの親交、炭坑労働……。なかでも寄宿学寮長クルト・ハーンとの出会いは、著者の生き方に永続的な影響を与えることになる。
本書は稀有な魂の成長の記録といえよう。

目次

1 序幕
2 戦争
3 泣く、笑う
4 読む
5 恐れ
6 死、初めてのとき
7 脱出の試み
8 ザーレム
9 ドイツでの学生時代
10 汎ヨーロッパ運動
11 ベルリン
12 もう一つの体験
訳者あとがき