みすず書房

絶滅された世代

あるソヴィエト・スパイの生と死

LES NOTRES [OUR OWN PEOPLE]

判型 A5判
定価 2,750円 (本体:2,500円)
ISBN 978-4-622-03482-7
Cコード C1020
発行日 1989年1月31日
備考 現在品切
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絶滅された世代

第一次世界大戦を目前に控えた時期に、オーストリア領ガリチアとロシア帝国が接する国境の小さな町で、6人の少年達が成長した。少年達は早くから秘密の友情の絆を結んだ。この絆は皆の生涯を通じて変らず保たれただけではなく、それぞれの運命に深い影響を及ぼした。十月革命直後の平穏な歳月に、この若者達は、別々でありながら、やがて一所に集まっていくいくつかの道を通って、ソヴィエト軍事諜報部と保安機関に先駆者として所属し、ソヴィエト国家に奉仕することとなった。そして一人残らずが、ソヴィエト保安機関の手にかかって処刑されるか、あるいは自殺するかして非業の死を遂げるのである。

この本は、この人々の叙事詩であり、とりわけその一人イグナス・ポレツキーの叙事詩なのである。それは彼の未亡人によって30年間に及ぶ隠棲と内省を経たうえで綴られた。この物語は、読者の心を捉えて容易に離さないだろう。著者は長い間、この小さな仲間達のただ一人の生存者だった。レーニンとロシア・ボルシェヴィキ党に指導された世界革命の将来を深く信じた1917年のヨーロッパ青年世代を、この仲間達は、恐るべき徹底さで象徴している。彼らの確信は熱烈だったが、多くの者にとっては、それは耐え難いほどの苦痛を伴いながら、年月が経つにつれて緩慢に腐食され、ついには失わるべく運命づけられていた。

この本は、彼らの破れた夢にささげた飾り気のない正確な証言であり、抑制された感情で透過されている。それは同じように罠に掛けられた人々すべての運命についての、歴史の立場にたった深く人間的な黙想であり、その破滅の過程についての冷静な分析なのである。

……ロシアのボルシェヴィキ党内だけではなく、コミンテルンに結集した全共産党の指導部と下部党員の間で、さらにはソヴィエト連邦に奉仕する国際機関の内部で、革命家の第一世代を抹殺することによって、スターリンは勝利していった。(ディーキン「序文」より)

トロツキーの未発表の文章「ある悲劇的教訓」を巻頭に付す。