みすず書房

『日本資本主義発達史講座』(1932年)の刊行を基点とし、15年戦争下、社会科学者はどのような方法(分析)によって世界認識を試みたのか? そしてその認識は戦後どのように継承され発展していったのか?(「日本社会科学の世界認識」) その世界認識の視点は、戦後民主主義のなかで「市民社会」派社会科学を誕生させるが、それはいかなる種子を残したのか?(「内田義彦における『市民社会』」)

そうした戦後社会の分析を深めるなかで、著者は、権力に抗した〈市民〉の典型ともいえる3人を『天皇の逝く国で』(ノーマ・フィールド著・みすず書房刊)に見いだす。そして、その3人を押し流そうとするメイン・ストリームに〈市民社会〉とはかけ離れた、今日の日本社会の危うさをみるのである。(「歴史にたいして責任をとることの複雑さ」)
戦前、戦後に屹立する社会科学者の思想を交錯させながら鳥瞰的にその継承・発展を追い、〈市民〉をとり巻く現代状況を浮き彫りにするとともに、在りうる〈市民社会〉像を透かしてみせる9篇を収める。