みすず書房

母権論 1

古代世界の女性支配に関する研究

DAS MUTTERRECHT

判型 A5判
定価 7,480円 (本体:6,800円)
ISBN 978-4-622-03786-6
Cコード C3010
発行日 1991年9月19日
備考 現在品切
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母権論 1

ユングの「グレート・マザー(太母)」の概念の源泉となり、ヘッセ、ベンヤミンにもその影響が見られる本書は、名のみ高くて内容はこれまで定かでなかった。ここにその全貌が、ようやくわれわれの前に明らかとなる。
バッハオーフェン(1815-87)はスイスのバーゼルに生まれ、26歳にしてバーゼル大学ローマ法教授となった。しかし数年で教授を辞し、以後、裁判官としての生涯をおくりながら、在野の学者として『母権論』を始めとする画期的な研究を著わしたのである。バッハオーフェンは歴史法学の思想圏で育まれた偉大なロマニストの一人であり、ドイツ近代法学の祖ともいうべきサヴィニーの深い学問的影響のもとにあった。
彼は、ヘーロドトス、ホメーロス、アイスキュロス、エウリーピデースなど膨大な文献に現れる神話伝承と歴史との関連を探り、父権制以前に母権制が存在したことを発見した。アプロディーテー女神に象徴される自由な性交渉(乱婚制)から、デーメーテール女神に象徴される母権制、アポローン男神に象徴される父権制へ、ギリシア、エジプト、インド、中央アジアにわたる、女性支配の雄大な研究は、まったく類を見ないものである。神話学・法学・民族学・女性学・家族史といった、幅広い分野の関心に答える書といえよう。全3巻。