みすず書房

「希有な旅人でもあり自由奔放な知識人でもあった」(村井吉敬)

東南アジアの島々を歩きつつ、人びとの暮らしの細部からユニークな思索を重ねていった鶴見良行は、バナナ、エビ、ナマコ、ヤシなど、具体的な「モノ」の交流史を通じて、閉ざされた日本人の国家意識を解体し、広大な国境なき世界へと開いていったのである。

本巻は安くて甘い果物「バナナ」の背後に、多国籍企業の影、農園労働者の困苦、日本と東南アジアの歪んだ関係を浮き彫りにした代表作『バナナと日本人』と、その関連論考、同時期に書かれたエッセイ・書評を収録する。解説は、村井吉敬氏による「鶴見良行バナナ研究とその周辺」。