みすず書房

アジアを歩くひと、鶴見良行の全軌跡を網羅する本著作集の第9巻には、著者晩年の代表作『ナマコの眼』と関連エッセイを丸ごと収めた。

浅い砂泥の海底で暮らす、奇妙な棘皮動物ナマコ。実はこの生物、東北・東南アジアから南太平洋の島々までの多種多様なネットワークを繋ぐ、重要な歴史を担った存在だったのだ……

著者は、日本でも『古事記』の時代から姿を現わすナマコの軌跡を追って、20余年の長きにわたってフィールドワークを重ね、壮大な叙事詩を思わせる「ナマコ大全」をここに完成させたのであった。大文明を遠く離れた周辺の海の民たちが描いてきた、貴重な〈もう一つの世界史〉のぺージが開かれていく。

晩年の著者の良き理解者、中村尚司氏の力作解説「ナマコの眼で世界を見る」を併収する。