みすず書房

〈世界の美のあらゆる層に、何とさまざまの顔があり、また眼があるのだろう。それは宇宙と一体の交流の穴〉。岡本太郎の最後の著作『美の世界旅行』を『宇宙を翔ぶ眼』に改題して巻頭に置く。インド、ユーラシア、スペイン、中南米、韓国を巡る岡本太郎の眼差しは、それぞれの国の人と美を見つめながら、あたかも時空を超えて宇宙へ大きく羽ばたくようでもある。

また岡本太郎の残された著作群のなかから22編を選んで、〈迷宮のなかを行く〉〈思い出のパリ〉〈交游抄〉として構成する。それぞれは岡本太郎の生き方であり、岡本太郎の時代であり、岡本太郎をめぐる素晴らしき群像でもある。

戦前の新聞への寄稿から、新しい文章まで、幅広く集められた作品からは、十代に一人パリにいて、芸術へのあつい思いを胸にしながら〈心の中で、もう鳴咽して居た〉孤独な岡本太郎の姿もあれば、〈瞬間瞬間に強烈に情熱に燃えあがり無限にひろがってゆく〉記憶に焼き付いている岡本太郎もいる。本巻からまた新たな岡本太郎の風貌が見えてくるに違いない。全5巻完結。