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フラッシュ

或る伝記

FLUSH


「彼女は人間の女性で、彼は犬だ。このようの密接に結ばれながら、このようにはなはだしくかけはなれて、二人はお互いを見つめあった。それからフラッシュはひとっとびソファに跳びあがり、これから先ずっと寝ることになる場所――バレット嬢の足もとのひざ掛けの上に身を横たえた。」

本書は、愛犬フラッシュの眼を通して、英国19世紀の有名な女流詩人エリザベス・バレット・プラウニングの波乱にとんだ生涯を描いたユニークな伝記である。ウインポール街における病弱な詩人との出会いに始まり、ロバート・プラウニングとの秘かな恋、ホワイトチャペルの犬泥棒の恐怖を経て、イタリアへの駆け落ちと、二人三脚のドラマは展開してゆく。また、家父長制との確執、貧民窮の様子、英国とイタリアの対比、心霊術など、当時の社会背景もこの伝記の奥行きを深いものにしている。前衛的な小説『波』のあとに、「犬になりたいと思う小説家」によって書かれた、ウィットに満ちた軽快な伝記。姉のヴァネッサ・ベルによる挿絵もこの作品をいっそう愉しいものにしている。


「フラッシュ」の著訳者:

ヴァージニア・ウルフ
Virginia Woolf
1882年、著名な文芸批評家レズリー・スティーヴンを父親として、ロンドンに生れる。父親の教育と知的な環境(ブルームズペリ・グループ)の中で、早くから文学への情熱をはぐくむ。1915年、最初の長編小説『船出』を出版し、ついで『夜と昼』『ジュイコブの部屋』を発表する。さらに、彼女の小説世界を十全に開花させた傑作『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』が生れる。ここで彼女は、プルースト、ジョイスらによって示された「意識の流れ」を、独自の立場から追求している。『幕間』をのこして、1941年神経衰弱のため自殺。また、重要なものとして他に、『自分だけの部屋』『三ギニー』など数多くのエッセイ、内面の記録たる「日記」がある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
出淵敬子
いづぶち・けいこ
1937年東京に生れる。1961年日本女子大学英文科卒業。1970年東京大学大学院博士課程修了。1978年コロンビア大学大学院修了。イギリス小説専攻。現在日本女子大学文学部教授。訳書 Q.ベル『ブルームズベリー・グループ』(みすず書房、1972)、V.ウルフ『ジュイコブの部屋』(みすず書房、1977)、V.ウルフ『存在の瞬間』(共訳、みすず書房、1983)、Q.ベル『ラスキン』(晶文社、1989)など。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「フラッシュ」の画像:

フラッシュ

「フラッシュ」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/176頁
定価 2,100円(本体2,000円)
ISBN 4-622-04559-1 C0097
1993年2月26日発行

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