みすず書房

円環の破壊

17世紀英詩と〈新科学〉

THE BREAKING OF THE CIRCLE

判型 四六判
頁数 360頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-04675-2
Cコード C3098
発行日 1999年3月8日
備考 現在品切
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円環の破壊

《新しい哲学はすべてを疑わせる。/火の元素はすっかり消え果てた。/太陽は居場所を失い、地球も同様、誰の知恵も/それをどこに探すべきか示してはくれない。》(ジョン・ダン「一周年」)

本書は、文学的想像力と自然科学または自然哲学の関係を17、18世紀のイギリス文学を題材として考察したものである。

近代科学の発達とそれに起因する自然観の変化は、ただ科学者や哲学者の世界にだけあったのではない。自然と結ばれて生活し、自然のなかに宗教と倫理と美学の典型を読みとっていた当時の人々にとって、自然観の変化は神と人間に対する見方の変化でもあった。そしてこの変化を最も敏感に感じとり、転換期の戸惑いの代弁者となったのが詩人や文筆家たちだった。

宇宙は完全な同心球をなす天球層からできていると考えた中世的な観念が破壊され、世界を包んでいるはずの城壁が消え去りはじめたときの、人々の懐疑と困惑を、ジョン・ダンを中心とする形而上学派詩人たちや、『楽園喪失』の作者ミルトン、ケンブリッジ・プラトニストのヘンリー・モア、その他多くの文筆家たちの作品のなかに辿った本書をよむとき、文学もまた自然や宇宙についていかに多くのことを、情感と想像力をもって語ってきたかが分かるだろう。

目次

まえがき
改訂版のためのまえがき
序章
1 「巧みに造られた小世界」
2 完全な円環
3 一つの世界の死
4 円環の破壊
5 満足と切望

訳者あとがき
索引