連想実験【新装版】
ユングを一躍有名にしたのは、連想実験の研究だった。彼自身『ユング自伝』の中で「私の学術的な仕事は1903年の連想実験に始まる」と述べている。本書は連想実験に関する基本的で、かつまた興味深い事例を含む7論文を収録する。まさに初期ユングの華ともいうべき書であろう。
ユング以前の連想実験は、言葉への反応時間の多少によって知能の性能や程度を測定するために使われていた。実験の結果は数学的に処理され、平均値が重視された。しかし実験の対象としての心は、いろいろな「乱れ」をみせて、実験のめざす平均の数値を変えてしまう。ユングは他の人が実験の誤りと見たこの「乱れ」に注目し、実験を乱すものこそが無意識のコンプレックスであることを発見した。
ユングの開発した100の刺激語による連想実験は、コンプレックスの存在とその種類とを簡単に、目に見える形で表わすことができる。看護婦のハンドバッグ盗難事件を連想実験によって解決した例など、思わず引き込まれてしまう。
本書は、無意識の働きをユングと共に体験させてくれる希有な書といえよう。
「連想実験【新装版】」の著訳者:
- カール・グスタフ・ユング
- Carl Gustav Jung
- スイスのケスヴィルに牧師の子として生れる。バーゼル大学医学部卒業後、チューリッヒ大学の神経科でブロイラーの指導を受ける。フランスに留学しジャネの下で研究、帰国後、連想実験による研究を発表し有名になる。1907年フロイトと知り合い、精神分析学の発展に寄与するが、1913年に訣別、独自の分析心理学を創始する。精神病、夢、神話などの研究を通じて無意識の構造を明らかにする。後にイメージやシンボルの研究によって人間の宗教性の問題を深く追求する。著書 Die Gesammelte Werke von C.G.Jung、Walter-Verlag、Olten。邦訳「ユング著作集」(全5巻、日本教文社、1970)『ユング自伝』(全2巻、1972-73)『分析心理学』(1976)『タイプ論』(1987)『ヨプへの答え』(1988、以上みすず書房)『人間と象徴』(全2巻、河出書房新杜、1975)『心理学と錬金術』(全2巻、1976)『無意識の心理』(1977、以上人文書院)『変容の象徴』(筑摩書房、1985)ほか多数。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 林道義
- はやし・みちよし
- 1937年長野県に生れる。1962年東京大学法学部卒業。1968年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在東京女子大学教授。著書『ユング』(清水書院、1980)『ユング心理学の応用』(みすず書房、1988)『ユングの心理学と日本神話』(名著刊行会、1995)『父性の復権』(中央新書、1996)『主婦の復権』(講談社、1998)『図説ユング』(河出書房新杜、1998)『ユング思想の真髄』(朝日新聞社、1998)『間違えるな、日本人!』(対談)(徳間書店、1999)『フェミニズムの害毒』(草思社、1999)『母性の復権』(中公新書、1999)『母性崩壊』(1999)『無意識への扉をひらく――ユング心理学入門I』(2000)『国を売る人びと』(共著、2000、以上PHP研究所)『家族破壊』(徳間書店、2000)ほか。訳書 ウェーバー『政治論集』1(共訳、1982)ユング『タイプ論』(1987)『心理療法論』(1989)『個性化とマンダラ』(1991)『連想実験』(1993)『転移の心理学』(共訳、1994、以上みすず書房)『元型論』増補・改訂版(1999)ノイマン『意識の起源史』(全2巻、1984-85、以上紀伊国屋書店)。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
この本の関連書
「連想実験【新装版】」の画像:
「連想実験【新装版】」の書籍情報:
- 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/264頁
- 定価 2,730円(本体2,600円)
- ISBN 4-622-04990-2 C1011
- 2000年12月15日発行