みすず書房

3000年前に滅びた中国古代の殷王朝が、伝説のかなたからよみがえった。これはシュリーマンのトロイア発掘にも匹敵する、20世紀最大の考古学的発見をめぐる物語である。
永い闇にとざされ、中国大陸の大地に埋もれていた殷帝国の都、王侯の大墓、美しい青銅器、亀甲と獣骨に刻まれた文字が、3000年の時を隔てふたたび陽光の下、地上に姿をあらわした。王国維・羅振玉ら、そしてその後を継ぐ学者たちが、この謎に挑む。それは、司馬遷の『史記』の叙述が真実であることを証明する感動にみちた瞬間であった。
アジア考古学のルネサンスともいうべきその学問的成果は、古代人の文化と社会、生活と感情を生き生きと再現し、人類の古代史に画期的な光を投げかけた。学術的にも高い内容を、これほど魅力的に語りえ書は、類少い奇蹟のひとつであろう。