みすず書房

草田男の俳句には〈花に露十字架に数珠煌と掛かり〉〈勇気こそ地の塩なれや梅真白〉など、キリスト教にかかわる作品がある。そのかかわり方を伝える、一人の神父との対話がある。「あなたは自然を見ているととても不思議な気がしてくるでしょう?」草田男は答える「ハー、そうです。」「そしてそこで作品ができると大きな感謝で一杯になるでしょう?」「ハー、その通りです」「それでいいんですよ」「アー……」「この会話は父にとって句作と信仰の絆のエッセンスを捉えたものとして深く心に刻まれたようでした。」(中村弓子「父の洗礼のことなど」)
「懐疑と憧憬、不信と希求、躊躇と果敢」(草田男)との間で絶えず動揺を続ける、緊迫した、孤独な様相を帯びた詩人・草田男の生涯は、不思議な明暗にいろどられている。そこから生れた、時には難解と言われる作品を読み解くために、本書は新しい視点を提供するものとなろう。

[1987年8月初版発行]

目次

プロローグ
草田男における求道
第一期 草田男以前
第二期 求道以前
第三期 求道の模索
第四期 求道の深化
エピローグ
(付)
草田男キリスト教関連句
引用文献
中村草田男略年譜
あとがき